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ほんとうに支援が必要なのは16万人

この都議会の代表質問で石原都知事は、「減税規模を上回る事業費できめ細やかな施策を手当てする。ネットカフェ難民が自立できるよう援助策を講じていく」との方針を示した。ネットカフェ難民は東京に2000人いるとも言われている。彼らにどうやって就労してもらうか、セーフティネットこそ考えるべきではないか。

就職氷河期で苦労した世代にスキルを身につけてもらう

問題は、非正規雇用の多さだ。就職氷河期のころ、ある大学の工学部に講演に行ったことがある。教授が、「工学部はだいたい100%就職が決まるのに、7割しか決まっていない」と深刻な顔をしていたのを覚えている。失われた10年は就職口がなかった。

大卒だけでなく高校を卒業した者の就職先もなかった。高校の先生が「生徒の行き先がなくて大変だ」とよく言っていた。この時期に就職できなかった若者がいま25歳から35歳くらいの年長フリーターとなっている。彼らにはスキルアップが必要だ。

11月7日付けの産経新聞は「都、低所得者に融資」と報じた。引用しよう。

「働く意欲があるのにさまざまな事情から就職できない低所得者層を対象に、東京都が無利子の貸付制度を新たに設けることが6日、分かった。来年度から3年間限定で実施し、職業訓練を受けるまでの生活資金60万円と、就職先で初月給が出るまでの間に必要な一時金の50万円、最大で110万円を貸し付ける」

「制度は『低所得者生活安定化プログラム』で、対象となるのは生活安定の意欲があっても時間や生活に余裕がない若年層、子育てに追われながら生活を維持しなければならない母子家庭。倒産やリストラなどで職を失ったが、働く意欲のある中高年層。さらに、日雇いなどの非正規雇用で住居費に困窮し、ネットカフェなどが生活拠点になっている人とした」

また11月15日付けの朝日新聞は「脱『ネットカフェ』へ融資」と以下のように報じた。

「就労意欲があるかどうか、新設するサポートセンターや区市町村の窓口で審査。都が就職相談や求人紹介をする『東京しごとセンター』で、希望や経歴をふまえて就労カウンセラーと訓練する職種を決める。職業訓練は3カ月から半年で、その間、カウンセラーは就職支援もする。訓練中は1人あたり月15万円を支給。来年度は約3千人への給付を想定している」

おそらくこれから都当局から案がよりブラッシュアップして整理され、都議会で議論されることになるだろう。税負担を減らすなど、低所得者にただ“与える”だけではだめだ。税金を払えるよう、これからの社会を背負ってもらえるよう、育ってもらう必要がある。

猪瀬 直樹(いのせ・なおき)

作家。1946年、長野県生まれ。

1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命される。政府税制調査会委員、東京大学客員教授、東京工業大学特任教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。東京都副知事。最新刊に『東京からはじめよう』(ダイヤモンド社)がある。

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