「のぞみ」の停まらない東京になってはならない
「眼からウロコ」の第2回で、羽田空港の24時間稼働が必要な理由を説いた。空のつぎは海だ。先日、大井コンテナ埠頭の視察に行き、日本の海運について、あらためて考えをめぐらせた。日本の1年間の輸出入貨物量は12億トン。99%以上は港から出入りしているのだから。
不思議に感じることがある。100円ショップで売っているワンタッチの傘だ。昔は1000円はした。コンビニのビニール傘も、以前は500円だったのに、いまは300円で売っている。人件費の安い中国でつくって日本に輸入しているのだろう。物流でいえば輸送費もかかっているはずだ。どうやって利益を出しているのか。
小さな商品なら、かさばらないので輸送費も安く済むだろう。それを100円で売っているのはわかる。だが、もともと1000円で売っていたワンタッチ傘のような大きな商品までも100円で売っているのは、物流コストをかなり安く抑えていなければできない。
これを可能にしているのが、世界的に大規模な物流の基盤を担っている海上コンテナ輸送である。
東京港はハブ港でなければならない
海上コンテナは、どれだけ世界の海を動いているのか、といえば海上コンテナの数は年間8820万TEUにのぼる。「TEU」は海上コンテナの単位である。海上コンテナの長さは20フィートが基準だ。1フィートは30センチメートル。長さが6メートルの箱と考えるとわかりやすい。この20フィートのコンテナ1個を1TEU(Twenty feet Equivalent Unit)と呼び、貿易量を表す単位としている。1TEU=6メートルのコンテナ1個である。最近は6メートルの2倍の12メートルのコンテナが主流になりつつある。高速道路を走るトレーラーを見たことがあるはずだ。あれは2TEUとカウントする。
先ほどの8820万TEUのうち、航路別の取扱量は、北米航路が1700万TEU(19%)。欧州航路1300万TEU(15%)。アジア航路1900万TEU(22%)。そのほか(大西洋航路など)が3900TEU(44%)となっている。注目してほしいのはアジア航路が北米航路よりも多いことだ。これは中国の経済成長が牽引(けんいん)しているとみてよい。
中国の輸出入量がさらに増えれば、日本に寄港せずに中国を直接目指す北米航路が増えるだろう。ジャパンバッシングならぬ「ジャパンパッシング」だ。そうなれば、東京は、釜山や上海に行ったついでに寄るだけの二流の港にならないとも限らない。新幹線にたとえると“のぞみ”が停まる駅でなく“こだま”の駅では、小さな都市である。空港にハブ空港があるように港にもハブ港がある。世界最大規模の経済圏を要する東京港が北米、欧州、アジアを結ぶハブ港を目指さなければ、グローバル化時代の都市間競争に後れをとることになる。
先日、作曲家の三枝成彰(さえぐさしげあき)氏から「オーケストラの楽器を海外から運ぶときに、船便が上海で積み替えがあって、届くのが1日遅れてしまった」という話を聞いた。世界中から東京港への直行便を着実に増やしていけば、このようなロスはなくなるだろう。
(全 4 ページ中 1 ページ目を表示)
この連載のバックナンバー バックナンバー一覧へ 画面先頭に戻る
- 2つの民営化を否定するのか (2008/09/22)
- 米農政は社会主義のようだ (2008/09/17)
- 雅子妃問題と新しい時代病 (2008/09/09)
- うどん値上げの裏に公益法人 (2008/09/03)
- 洞爺湖サミットは失敗だったのか (2008/08/27)

