このページの本文へ
ここから本文です

毎月支払う家賃、駐車場代、水道光熱費、通信費のほとんどもそうで、別に東京電力やNTTのテレビCMを見て、比較検討のうえ支払い先を決めたわけでは全然ない。東京に住む人は、東京電力がテレビCMを流そうが流すまいが、同社に電気代を支払うことになっている(では、東京電力は、なぜあれほどガンガンCMを流しているのか? その本当の理由については稿を改めよう)。

家族の様子を見ても、衣類や靴などはお気に入りの店(もちろん東京キー局にテレビCMを出せるような経営規模ではない)で選んでいる。トイレットペーパーだの洗剤だのバストイレタリー関連も、大きなドラッグストアで、ひたすら安い物を選んで買っているようだ。メーカー名など、気にはしていない。

子ども(高校生)に聞いたら、テレビCMを見て支出するものとして、マクドナルドの新発売のハンバーガーやセットメニュー、映画のロードショー、ゲーム、CDのほかには挙がらなかった。

「衣食住」のうち、テレビCMがそこそこ「効いている」ように見えるのは、わが家では「食」の分野くらいだ。それも米や肉や野菜はテレビの宣伝広告とは関係ないから、CMに基づいて買っているのは、主として「永谷園のお茶漬け」「キューピーのマヨネーズ」「カップめん」「清涼飲料水」などのメーカー品。ついでにいえば、マヨネーズはテレビCMが流れなくなってもキューピーを買い続けると思う。味の素のそれは、うちの味ではなく、いくら宣伝しても買わない。みなさんのお宅では、どうだろうか?

民放が密かに怯える、北米トヨタの成功事例

そして、以上に述べた事柄が「それは、あんた(の家)だけの特殊な事情だろう?」というだけでは、とても済まなそうな出来事が、テレビの世界で現に起こりはじめたのだ。

2005年、北米で日本車が史上空前の売れ行きを示したことは、報道などでご存じだろう。いま民放関係者が眉をひそめて密かに語り合っているのは、「トヨタは北米でいちばん売れた車種のテレビCMを、一切打たなかったらしい。もし、トヨタが日本で同じやり方を始めたら。日産やホンダも追随し始めたら……。民放は、たいへんなことになってしまう」という心配なのである。

筆者は、複数の民放テレビ関係者からそう聞いた。

2005年12月に出そろった東京キー局5社の中間決算は、営業収入でテレビ朝日とフジテレビ以外の3社が前年度比マイナスで、あまりよくなかった。そして、「実は、その次の四半期の数字も、よくない。世の中は好景気で、株式や土地はバブルとすらいえるほど好調なのにパッとしないのは、メーカーがテレビCMを絞りはじめたからだ」と解説する関係者も出始めた。

第2回に続く)

坂本 衛(さかもと・まもる)

ジャーナリスト

1958年5月、東京生まれ。牡牛座。O型。早稲田大学政治経済学部政治学科を中退。在学中から週刊誌、月刊誌などで取材執筆活動を開始。前「GALAC」(NPO放送批評懇談会)編集長。元「放送批評」編集長。現・田原総一朗責任編集「オフレコ!」(アスコム)責任副編集長。日本大学芸術学部放送学科非常勤講師。東京・神楽坂に在住。妻1子2。最近の仕事に小川和久著「日本の『戦争力』」(アスコム刊)の聞き手、「子どもにバカウケの親子ゲーム88」(ぶんか社文庫)ほか。「オフレコ!」第2号は2月10日発売予定。

著者ウェブサイト

(全 2 ページ中 2 ページ目を表示)

あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください

記事検索 オプション

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る