仮に、今回のトップがNHK再生の為に、尽力する人材であるとした場合、改革の任期を考えるとすれば、最低でも5年は必要だ。周りに協力者を集め、断行してゆく為には、その責任者が頓挫しないという信頼感と権限を与えなければ、絶対に無理だ。
民間放送局にでさえ、新規事業に対しては、非常に否定的な保守的な体質がある。NHKのような巨大組織の動きの遅さを考えれば、一つの改善案件が実施されるまでの手続きが、遅々として進まないに違いない。
問題解決には、いかにトップが号令をかけようとも、従業員自らが、NHKのぬるま湯から脱し、国民の信頼を取り戻す覚悟があるのかにかかっているとも言える。これまでのNHKの歴史の中で、こういった形で会長が采配を取ることは初めてではない。だが、その時の会長も77歳と高齢で就任し、わずか10カ月にも満たない期間で退任している。職員は、「お手並み拝見」とばかりに、傍観者として振舞うだろう。
日本最大の自動車メーカーのトップが、以前、こう述べていた。「これからは変革とスピードが大切だ。変われない物は去ってくれ」。これは、企業トップが経営陣に対して言った言葉だ。従業員に対してではない。そして、その翌年こうも述べた。「残念ながら、変わろうとしない人(経営者)が多数いる。せめてものお願いだ。若い人が変わろうとするのを邪魔する事だけは止めてくれ。」と。
一方、ここにきて、このNHK会長人事は、あらぬ方向へと波及し動き出したように思う。この新会長の選任に問題を提起していた女性経営委員の経営する会社が、所得隠しを行っていたという報道である。この女性委員が、選任方法に問題を提起してから、ある日、突然、スポーツ新聞紙上の、彼女のスキャンダルが報じられた。あまりに唐突な記事であったが、まさか、選任反対への報復ではないのか、ふと、そんな疑念がよぎった。そして、ここに来て、所得隠しが大々的にニュースになった。
NHKに憂国の志士はいないのか
以前より、この新会長は、前政権のトップとの繋がりが報じられてきた人物の推薦でもある。この新会長選任が、これまでの郵政民営化などと同じように「ある意志」を持っているとすれば、今回のNHK改革は、国民が望む方向ではなく、この組織を蹂躙して、本当の意味での「国営放送」にしてしまおうという、目論見が隠されていても不思議ではない。この金余りの放送局を見れば、赤字国家の官僚が、税収補填や天下りに利用しようとしても何等不思議ではないのだから。
ここまでの醜態をさらし、このままで、自浄作用がなければNHKは「解体」されてしまうだろう。だが、それは、国民の為のメディアを健全にするという意志で行われる訳では決してない。政府が都合の良いよう解体する事になるだろう。例えば、この日本の地方自治体の収支を考えれば、将来、検討されている道州制の導入に合わせて、地域ごとのNHK解体が一番の具体策ではないだろうか。分割してしまえば、それぞれの地域貢献であるとか、売上規模が小規模になるなど、対外的な理由づけとスリム化感がアピール可能だからだ。
以前にも書いたが、これからのNHKの行く先には、国民は絶対に着目していなければならない。新会長、旧体制側との確執。そして、政治的干渉。これまで述べてきたように、「国営化」=「受信料税金化」は、決して国民の為にはならないはずだ。この巨大な放送局の局員自身が、「安穏とした国営放送」を望んでいるとしても、北朝鮮のように、事実を報道しない局は必要ないからだ。
さらに国民の期待を裏切った事への反発を理由に国営化されては、二度と、「国民からの受信料で成り立つ、国民の放送局」というレゾンデ―トルへ立ち戻る事は出来ないだろう。
NHKに憂国の志士は果たして存在するのであろうか。
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