1997年には、ハリウッド俳優、アーノルド・シュワルツェネガーを起用したテレビCMで派手な上陸を果した、アメリカの衛星放送「DIREC TV」が放送を開始した。これは、二社の競合による視聴者サービスの向上と言う意味でも期待が持たれた事業参入であった。
アメリカ側はヒューズ、日本側は、当時のベンチャー企業の代名詞、カルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)が代表となって事業を推進していた。だが、またもや、この「DIREC TV」もパーフェクTV用の受信アンテナでは、衛星の位置が異なり視聴不可能という、視聴者泣かせのアンテナ問題を抱えて放送を開始せざるを得なかった。つまり、CSデジタル放送を全て視聴するには、二つの衛星放送プラットフォーム事業者と契約し、スカパー用、ディレク用最低二つのアンテナを家屋に設置しなければならなかったのだ。この問題は、日本の住宅事情から両者の思惑以上に衛星放送加入を検討する人々の決断を鈍らせた。この二社の競合は、アンテナ問題から加入者の伸び悩みに直結してしまったのだ。
そしてその日は思ったより早くやって来た。外資系特有の判断の早さなのだろう。わずか3年にしてヒューズは、「DIREC TV」からの撤退を表明した。視聴者の事を考えれば「スカイパーフェクTV」による事業の継続と、当時の「DIREC TV」加入者40万人の移籍が可能かどうかが事業撤退決定の重大なポイントだった。
アメリカ資本の会社に、赤字を出しても踏みとどまれと指導したところで、日本役人の意見など聞く耳もたなかったろうが、とは言え、これまでの放送行政でテレビ局が潰れてしまった例などない。役人が責任を取らない体質なのは周知だが、それでも当時の行政側担当官庁は肝を冷やしたに違いない。役人は「視聴者が無事移行、保護した。」それで済むだろうが、ディレクTVのアンテナとチューナーを購入して設置した視聴者は、一体何が起こったのか、翻弄された気持ちで一杯だったろう。
このように、衛星デジタル放送の視聴者の受難を考えると、ワンセグにしろ、NHKチャンネル削減にしろ、視聴者不在のままで「役所の事情」やら「経営判断」だけで進展しまう可能性が大きいのだ。(次回に続く)
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