所有者に過度の管理能力を求める日本の建築生産システム
(千葉 利宏=フリー経済ジャーナリスト)
マンションの耐震強度偽装問題は、なぜ起こったのか。これは、欠陥マンションを設計・建設・販売した事業者らをいくら叩いたところで簡単に解決する問題ではない。その病巣は欠陥住宅や欠陥リフォーム問題にも通じる根深さを秘めている。建築現場の実態を消費者自身が認識し、厳しくチェックする以外に自己防衛策はないのかもしれない。
連日、新聞やテレビで、欠陥マンション関係者への激しいバッシングが続いている。こうしたなかで、建築業界が抱えているさまざまな構造的な問題が明るみに出てきた。建築確認申請の手続きが民間に解放されていたこと、その審査でデータ偽造を見抜けずにいたこと、構造設計事務所にコスト削減で厳しい圧力がかかっていたこと…。ほとんどが消費者に知らされずにきた事実ばかりだった。
今回の事件で重要なポイントは二つある。一つは、日本の「建築生産システム」が構造的欠陥を抱えており、そのことを、消費者はもちろん社会全体が認識していないこと。もう一つは、戦後一貫して続いてきた過度な持ち家政策が、バブル崩壊後の不良資産処理が進み土地価格の上昇が進む中でも、続けられたことである。土地価格が上昇しているにもかかわらず、低価格の住宅やビルが供給され続けてきている。
建物は「つくる」もの
日本の建築生産システムはもともと、所有者が自ら「つくる」ことを前提としており、「買う」ことを想定した仕組みになっていない。つまり、所有者が設計や建設を自ら厳しくチェックしなければならないのだ。巨額の費用が必要な建築物は、建物の所有者がみずから工事を発注するもの、専門的な建築知識を持って管理監督すべき対象、という考え方に基づいている。
日本の建築生産システムが「つくる」に偏重していたことは、建築基準法や通達で仕組みをつくってきた国土交通省の行動を見ても分かる。彼らは、自らの組織内に営繕部を設置。専門の建築技術官僚を雇い入れて、設計・施工を管理監督させるやり方をいまだに変えていない。大手企業も同様だ。東京電力やJRなど、自ら建築技術者を抱えて管理監督を行っているところは少なくない。
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