通常は経済が発展するにしたがい、産業の主役は製造業からサービス業へ、そしてさらに知識集約型産業へと転換していく。産業構造の転換により製造業の比重が下がると、自国通貨高は産業のダメージとならなくなる。むしろ自国通貨高が国内市場の購買力を高めることが、内需産業にとっては追い風となる。その結果、金融・ITなどの知識集約型産業がさらに発達するという好循環となる。これが先進国における産業構造高度化のシナリオである。
ところが日本では、産業構造の転換がシナリオ通り進まなかった。日本の製造業は相変わらず一流だが、次世代の産業は二流のままである。次世代産業の競争力が弱く欧米企業との競争に勝てないので、日本経済は依然として製造業に依存している。産業構造の高度化どころか、製造業中心の時代に先祖帰りしている感さえある。
“日本工房”の灯を守る
日本経済の状況は、こんな寓話に例えることができる。
「日本家のお父さんは、立派な工房を経営しています。お父さんはとても腕の立つ職人で、日本工房の製品は高く評価されています。貧しい農家に生まれたお父さんはとても働き者で、腕一つで立派な工房を育て上げました。
お金持ちになったお父さんは、息子たちを大学に入れ、ホワイトカラーにしました。ホワイトカラーは職人よりも賃金が高く、豊かな生活が送れると考えたからです。ところが息子たちの仕事ぶりはいまひとつです。仕事の効率が悪いので、出世も遅れがちです。
日本家では息子が一人前にならないので、相変わらずお父さんが家計を支えています。ところが最近は、隣の中国家が大きな工房をつくって、とても安い製品を供給するようになりました。日本工房の製品の評判は悪くないのですが、あまり高くは売れなくなりました。でもお父さんは必死の努力で工房の灯を守っています」
これに対して、アメリカ家の状況はこうだ。
「アメリカ家のお父さんは、大きな工房の棟梁でした。とても立派な工房で、お父さんは村一番のお金持ちになりました。お父さんは息子たちを大学院に入れ、銀行員やITエンジニアにしました。息子たちはとても優秀で、高い給料を取るようになりました。
その一方でアメリカ工房は日本工房との競争に敗れ、お父さんは工房をたたみました。でも息子たちが家計を支えてくれているので、お父さんは豊かな老後を過ごしています」
日本家の家計は、勤勉なお父さんが支えてくれている。しかし息子たちが早く一人前にならないと、豊かな生活を維持することはままならない。
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