アイピーモバイルの破綻、原因は“親”の不在
(石川 温=ケータイジャーナリスト)
「ポケットのなかにブロードバンドを」
2006年夏。アイピーモバイルの杉村五男社長は、業界関係者が集まる講演会で、未来のモバイルブロードバンドの世界の素晴らしさを高らかにうたい上げた。
それから1年とちょっとたった、2007年11月9日。アイピーモバイルは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、ウィルコム、イー・モバイルに続く、日本で6つ目の通信事業会社になる「はず」だった。ところがその直前の10月30日、アイピーモバイルは、負債総額9億円を抱えて、事業開始をあっさりと断念することとなった。
端末フリーを掲げた斬新なビジネスモデルを提示
アイピーモバイルは、TD-CDMAと呼ぶ通信技術を採用し、携帯電話業界に新規参入を果たす計画だった。TD-CDMA方式は11Mbps程度の速度を誇り、NTTドコモなどが採用するW-CDMA方式よりもデータ通信向けの技術とされる。
そのためアイピーモバイルは、電話機型の端末ではなく、「MBG(モバイルブロードバンドゲートウェイ)」と呼ぶ弁当箱サイズの通信機器を主力商品にしようとしていた。
この小さな箱は、TD-CDMAで基地局と通信を行い、無線LANのアクセスポイントの役割を果たす。つまり、ユーザーはMBGをカバンの中に入れておけば、そこから飛んでいる無線LANを使い、ノートパソコンや携帯ゲーム機(PSPやニンテンドーDSなど)で通信できる仕組みを提案していたのだ。
端末は、自由に好きなものを使える。まさにオープンなビジネスモデルの先駆けだった。既存の通信会社が手がけていない分野を開拓し、新たなモバイルブロードバンドの世界を切り開こうとしていた。
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