日本の月探査機打ち上げ迫る、独走の目論見崩れる
(松浦 晋也=ノンフィクション・ライター)
この夏、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、月探査機「かぐや」をH-IIAロケット13号機で打ち上げる。打ち上げは当初8月16日に予定していたが、直前に電子回路の配線ミスが見つかったため延期した。月への打ち上げは、1か月につき1週間ほどの打ち上げ期間内に、打ち上げる必要がある。地球、月、太陽の相対的な位置関係により、宇宙機に太陽光の当たる方向が決まるためだ。9月は、13日から21日を打ち上げ期間に設定しており、トラブルがなければ初日の9月13日の打ち上げを予定している。
「かぐや」は90年代初めに、旧宇宙開発事業団(NASDA)が企画し、旧宇宙科学研究所(現JAXA宇宙科学研究本部)と協力して開発を進めてきた。この段階では、アメリカを初めとした諸外国は月に興味を示しておらず、日本だけが国際的に独走態勢で月探査を実施するはずだった。
当初、かぐやは2004年の打ち上げを予定していた。だが、1999年のH-IIロケット8号機打ち上げ失敗、2003年のH-IIAロケット6号機の打ち上げ失敗と続いた打ち上げ失敗の影響を受けて、2007年まで打ち上げが遅れた。
その間に、アメリカは有人月探査の実施を宣言。中国は独自の月探査機「嫦娥1号」の開発を公表。インドもまた独自の月探査機「チャンドラヤーン1号」を打ち上げると発表した。月探査の独走ランナーだったはずの日本は、気が付くと宇宙超大国のアメリカに加えて、伸長著しい中国とインドからも追い上げられる情勢となっている。
しかも、「かぐや」後継構想と、中国とインドの今後の月探査ロードマップを比べると、日本の月探査が腰の据わった長期ビジョンに基づくものではないことが見えてくる。
NASDAの将来への模索が、かぐやを生んだ
「かぐや」は開発コードが「SELENE(SELenological and ENgineering Explorer)」。打ち上げ時重量は約3t、本体の大きさは2.1×2.1×4.8mだ。重量・サイズ共に2t積みトラックほどもある。月周囲の磁場やプラズマの環境を計測するセンサーなど、全部で15種類ものセンサーを搭載する。月の地形や地質を観測するカメラも搭載している。NHKが開発したハイビジョンカメラも搭載しており、月周回軌道から月面と地球とが1画面に入った風景を送ってくる。
また、かぐや本体が月の裏側を飛んでいるときに、地球との通信を中継する「リレー衛星」と、月の周囲の重力場を計測する「VRAD衛星」という2機の小型衛星も搭載している。
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