成長が期待できる法人向け携帯電話市場で出遅れ感
次に、携帯電話における法人向け市場の市場規模を推定したい(ここで法人向け市場と呼んでいるのは、契約者名義が「法人」の加入者から上がる売り上げである。個人が、携帯電話を仕事で使用した場合の通話料などは含めていない)。
2005年度における携帯電話会社各社の売り上げを合計すると、市場規模は約8.7兆円である。そのうち約10%が法人向け売り上げと言われているため、約9000億円が法人向け携帯電話市場の規模と考えられる。
ちなみに、携帯電話市場全体は伸び悩みが伝えられているが、法人向け市場は伸びている。日経コミュニケーション2007年4月15日号の記事によると、「携帯電話市場全体の過去1年間の成長率は5.3%だが、法人市場に限定すれば2倍以上の11%」となっている。
このうちソフトバンクのシェアはどれだけであろうか。ここでもソフトバンクのシェアは小さい。同じ日経コミュニケーションズの記事によると、「全法人利用の中の7割はNTTドコモ、2割がKDDI。残りがソフトバンクモバイルやウィルコム」とのことである。つまりシェアはせいぜい10%、売り上げは約900億円であろう。ソフトバンクの通信事業全体における法人向け携帯電話の売り上げは全体の約5%と推測される。つまり、規模は小さいものの今後の成長が期待できる携帯電話の法人向け市場で、ソフトバンクは出遅れている感がある。
シェアが小さいゆえに打ち出せるサービス
以上のことを合わせて考えると、今回のソフトバンクの新サービスには以下のことが言える。
1)今回のサービスは、シェアが小さいゆえに打ち出せるサービスである。
固定・携帯間通話の定額制は、法人向け市場のシェアと売り上げが大きいNTTやKDDIでは実現困難である。自分たちの売り上げを減らしてしまうからである。特にNTTは固定電話と携帯電話の会社が別々になっているため、ソフトバンクのような戦略はよけいに取りづらい。
ソフトバンクは固定・携帯いずれもシェアが低く、自社の通信事業のなかでも規模が小さい。ゆえに失うものが小さく、思い切ったサービスを打ち出せるのである。
2)ソフトバンク自身も、新サービスのリスクを考慮している。
ソフトバンクも新サービスのリスクを考慮していると考えられる。例えば、定額制の対象は「おとくライン」であり、よりユーザーの多い「BBフォン」ではない。あくまでもユーザーの拡大が芳しくない「おとくライン」の底上げが目的なのである。「おとくライン」の3倍のユーザー数があるBB Phoneにまでサービスの対象を拡大すれば、収益に対するマイナスのインパクトは大きくなる。
3)ソフトバンクの定額制戦略の限界
新サービスに代表されるように、ソフトバンクは定額制を前面に打ち出し、価格面でユーザーを訴求する戦略をとっている。これはユーザー数が他社より少なく、携帯電話サービスの無線部分の帯域に余裕があると言われるソフトバンクだからこそできる戦略だ。定額制サービスはソフトバンクにとって、販売が拡大しすぎるとネットワークに負担がかかり、通話品質が低下するというジレンマを抱えたサービスなのである。
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