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全国学力テストの問題性と課題(後編)〜学校格差・教育格差が社会格差を促進・再生産しかねない

2007年4月27日

(前回記事はこちら

(藤田 英典=国際基督教大学教授)

第2の重大な弊害は、義務教育段階から学校格差・教育格差が定着し、その格差が最近盛んに言われるようになった新たな「格差社会」を促進・再生産しかねないことである。

この新たな「格差社会」は、伝統的な階級・階層差や貧富の差に加えて、社会諸制度を市場原理主義的に再編することによってつくり出されているもの。例えば医療・福祉・教育のような社会的・制度的サービスを差別化(格差化)し、どのようなサービスを享受するかを(建前上)個々人の選択と責任に委ねることによって、それらのサービスを受ける機会やサービス内容の格差を正当化する点に特徴がある。

しかも、それだけでなく、雇用の在り方(雇用機会や雇用条件など)も、非正規・不安定雇用の増大に見られるように、バブル経済崩壊以降、特にこの5、6年、経済構造改革(規制改革・民営化)、企業経営改革(終身雇用・正規雇用の縮小、アウト・ソーシングの拡大、成果主義的人事・給与システムの導入など)、労働政策の転換(最低賃金制や時間外労働の弾力化)などが進む中で、多様化・流動化・不安定化している。そのため、雇用・福祉・医療など生活基盤の基底的な部分での実質的な格差や希望格差(不安定さと見通しの立てにくさに由来する人生設計・将来展望の格差)が目立つようになっている。

教育は、社会的・制度的なサービスであり、しかも、学歴は、雇用・就職の機会、収入を得る機会を程度の差はあれ左右する傾向がある(いわゆる学歴社会)。したがって、その教育の機会が義務教育段階から差別化・格差化されることになれば、教育格差がそうした「格差社会」での個々人の位置を人生の早い段階から左右していくことになる。

日本の義務教育は、明治以来、家庭・地域の経済力などにかかわりなく、全国すべての子どもに等しく、豊かな教育の機会と将来への希望を育む機会を提供するものとして発展してきた。ところが為政者・政策担当者(各種審議会の委員や文部科学省)は、この10数年、さまざまのもっともらしい理由をつけて、その基本的な理念を否定し、義務教育段階から教育の機会・希望を育む機会を制度的に差別化する改革を進めてきた。エリート的な中高一貫校や構造改革特区校などの選択制の学校の新増設と学校選択制の拡大はその代表例だ。それをさらに促進すべく、教育再生会議や規制改革会議は学校選択制の全国展開と教育バウチャー制(教育バウチャー=教育利用券を配布するなどして、公立学校の予算を選択・入学した子どもの数=教育利用券の数に応じて配分する制度)の導入を主張している。

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