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堀江貴文被告に実刑〜「ひたすら利益を追求」は否定された

2007年3月20日

(千葉 博=弁護士:矢野・千葉総合法律事務所)

3月16日、東京地方裁判所は、ライブドア前社長の堀江貴文被告に対し、検察からの求刑4年に対し、懲役2年6カ月の実刑判決を言い渡しました。同判決が認定したのは2点。1つは、有価証券報告書の虚偽記入。2004年9月期のライブドアの連結決算で自社株売却益等を不正計上して、赤字であるにもかかわらず黒字と偽った、としています。もう1つは、関連会社である「ライブドアマーケティング」(現バリュークリックジャパン)の株価をつり上げようとして虚偽の情報を公表した偽計・風説の流布です。

この判決は、単に世間の注目を浴びたというだけでなく、今後の企業活動や裁判のあり方に影響する重大なポイントがいくつか含まれていると思われます。

判決の企業活動への影響──形式的には違法でなくても許さない

この種の証券取引法違反という経済事犯で、実刑判決が下るというのは、過去の例に照らして重いものと言えます。このような判断に至った理由として、判決は、ひとつには、被告人に多額の被害を受けた株主や投資家に謝罪の言葉を述べることもなく、反省の情が全く認められないとの点を挙げています。確かに、被告人の口からそのような言葉が出ることはなく、むしろ検察官批判を展開するといった状況でした。これが情状面で不利に働いたということはあるでしょう。

しかし、それ以上に注目すべきなのは、判決が「被告人の行為を、一般投資家を欺き、その犠牲の上に立って企業利益のみを追求した犯罪で、その目的に酌量の余地がないばかりか、強い非難に値する」という点を指摘していることです。

判決が認定した事実のうち、自社株売却利益等の不正計上は、投資事業組合(ファンド)を使ったものでした。当時の会計ルールとしては、形式的には抵触するものではありません。ただ実質的には脱法的要素の強い行為で、言ってみれば「灰色」の部分です。そこのところを判決は、「ファンドは会計ルールで禁じられた自社株売却益の売上計上を可能にする目的で設立された」として、脱法目的のファンドの存在は許されないと断じています。

これは、裁判所が、「形式的には違法でなくても、実質的に一般投資家を害するような行為態様は許さない」とする姿勢を示したものと見ることができます。企業経営者の将来の行動に対する影響は大きいでしょう。法の隙間を突くような形で利益を上げようとする行為は、実質面をとらえて処罰の対象とされる可能性があるということだからです。そのような行為を自制しようという一種の萎縮的効果が生じるものと思われます。

もっとも、これは、企業の経済活動の透明性を高める方向に働くもので、全体としては好ましいものと考えてよいと思います。この判決により、今まで以上にコンプライアンス・内部統制を必要とする声が高まるでしょう。

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