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再利上げの狙いは、国際株式交換による企業買収の円滑化

2007年2月27日

(森永 卓郎)

2月21日、日本銀行は2日目の金融政策決定会合を開催し、「翌日物コールレートの誘導目標を0.25%引き上げる」とする福井総裁の提案を8対1の賛成多数で可決。即日実施した。翌日の東京株式市場は、利上げで為替が円高に振れなかったことや福井総裁が会見で「金利調整はゆっくりと行う」と発言したことから、日銀が連続利上げに踏み切る可能性が小さくなったと見て急反発した。

一見、今回の利上げを市場が容認したようにも見えるが、為替は投機的要因で動く部分が大きく、このまま円安傾向が続くとは限らない。また、金融政策の効果は漢方薬のように緩やかに効いてくるものだから、今回の利上げの影響は、数カ月様子を見ないと本当のところは分からない。ただ、私は経済理論が示す通り、今回の利上げが円高、株安をもたらし、日本経済をデフレに逆戻りさせる可能性が高いのではないかと考えている。

期待したG7での円安懸念は出ず

まず、考えなければならないことは、1月の金融政策決定会合で、3対6で否決された利上げが、なぜ今回圧倒的多数を得て可決されたのかということだ。統計を振り返る限り、その合理的根拠はどこにも見当たらない。例えば、2月15日に発表されたGDP統計速報で、10〜12月期のGDPデフレータの対前年同期伸び率は▲0.5%で、デフレがまだ継続していることを示していた(関連情報、PDFファイル)。

また、今回の金融政策決定会合で参照した12月の生鮮食料品を除く消費者物価指数総合は、前年同月比0.1%(関連情報、PDFファイル)の上昇で、1月の決定会合の際に明らかになっていた11月の0.2%上昇よりも、上昇率を落としていた。さらに、食料およびエネルギーを除く消費者物価指数総合も、11月の▲0.2%から12月は▲0.3%へと下落率を高めていた。つまり、日本経済はまだデフレから脱却しておらず、しかもわずかながら脱却が困難になっていたというのが、2月の金融政策決定会合をめぐる経済環境だったのだ。

そうしたなか、日銀はG7での議論に期待をかけていたのだと思われる。G7で日本の円安に非難が集中すれば、円安防止のための利上げという大義名分ができるからだ。しかし、G7では日本への非難は一切出なかった。日銀の思惑ははずれてしまったのだ。

利上げの根拠をGDPと消費の拡大に求めた

そこで日銀が根拠にしたのが、GDP速報だった。2月15日発表の10〜12月期の実質GDPが年率換算で4.8%という思わぬ高成長を達成したことで「これだけ景気がよくなったのだから」という理屈を利上げの根拠に持ち出したのだ。しかもこのGDP速報では、実質消費支出が前期比で年率4.4%(関連情報、PDFファイル)という高い伸びを示していた。これまで、景気の懸念材料は、消費だった。だから消費がこれだけ伸びたというのは、利上げを断行するための何よりの支援材料となったのだ。

しかし、この“消費拡大”の本当の理由は、比較対象の7〜9月期の消費が大幅に落ち込み、発射台が下がったことだった。10〜12月期の実質民間消費を半年前の4〜6月期の数字と比べると、伸び率はわずか0.002%にすぎなかったのだ。

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