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手嶋 龍一氏に聞く:6カ国協議に進展望めず

2006年12月27日

(聞き手:諏訪 弘=フリーライター)

■12月18日から開かれた6カ国協議では、目立った成果が得られませんでした。多くのマスコミが否定的な論評をしています。

手嶋 私はこの6カ国協議の枠組みを以前から冷めた目で見ていました。米中をはじめとする6カ国協議が有効に作用して、北朝鮮が核を廃棄したり、核開発のペースを落としたりするなど期待できないと以前から指摘してきました。従って今回の協議に成果がなかったことも想定の範囲内でした。

手嶋 龍一氏。外交ジャーナリスト

ただ、北朝鮮に核保有を宣言させた結果、東アジアで何が起きるのかという現実を米国のブッシュ政権に直視せしめたという点では意義があったと思う。従来の米国の対東アジア政策がいかに誤っていたかを、さしものブッシュ政権も、今回の失敗によってようやく認識したことでしょう。

6カ国協議の参加国は、それぞれに戦略的ミスを犯していた

今回の6カ国協議の参加国は、いずれも大きな戦略的ミスをしています。これでは協議の成果など望むべくもありません。

まず米国のブッシュ政権は、イラク戦争でつまずいた結果、東アジア、とりわけ、北朝鮮に安全保障上の関心を振り向ける余裕を無くしてしまいました。私は米国に力の行使をそそのかすつもりはまったくないのですが、強大な軍事力を背景にした外交こそ米国の真骨頂です。軍事力が背景にあればこそ、相手国は交渉で降りてきたのです。リビアのカダフィ大佐は「米国を本気で怒らせたらまずい」と常に意識してきました。

イラクへ力の行使をすると決断して以来、ブッシュ政権は、北朝鮮に対して武力行使をしないことを事実上明言してしまっている。これでは北の独裁者にみすみす行動のフリーハンドを与えたようなものです。

中国は、6カ国協議の議長国になったことで、冷戦後の東アジアで初めて外交のイニシアチブを握りました。にもかかわらず、友好国である北朝鮮に対して影響力を発揮できなかった。日本や米国からすれば、議長国の中国に険しいまなざしを向けることになる。今回の6カ国協議の失敗を苦々しく思っているのは中国のはずです。

ロシアもまた極東でその外交上の影響力を発揮する機会を逃している。前回までは6カ国協議に次官を送り込んでいたのですが、今回は北京に駐在しているロシア大使でお茶を濁している。かつて同盟国であった北朝鮮に対する影響力を温存したいというもくろみがあったのでしょうが、関心を急激に低下させています。

韓国の太陽政策の破綻は説明の必要すらないでしょう。北に融和的な政策を採っているうちに、金正日政権は核開発を急ピッチで進めてしまったのですから。

日本の戦略的ミスは、2002年9月17日に取り交わした「平壌宣言」に凝縮されています。国交の正常化を実現して、日本は北朝鮮に経済協力を行う。そのためにも、2003年以降はミサイルの発射実験を凍結するというのが宣言の骨子です。北朝鮮はこれを一方的に破ったのですが、日本政府は破棄しようとしていません。

参加各国がこれほどに大きな戦略的な誤りを犯していながら、北朝鮮がこちらの思惑通りに動いてくれるはずはない。

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