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Winny判決、ソフト開発者を処罰する基準を明示せよ

2006年12月19日

(千葉 博=弁護士:矢野・千葉総合法律事務所)

京都地方裁判所は12月13日、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を開発した東京大学の元助手に対して、罰金150万円(求刑懲役1年)の判決を言い渡しました。ゲームや映画ソフトの違法コピーを容易にしたとして、著作権法違反ほう助の罪を問うたのです。

Winnyについて、これまで、警察・防衛関連の情報も含め、各種の情報漏洩と関連しているとの報道が相次いでいます。またWinnyを利用することで、公開前のものを含む映画映像などがファイル交換という形で流出したこともあったようです。情報を守る、映画などの著作物を守るという観点から見ると、Winnyが1つの脅威であることは否定できない事実でしょう。

映画などを保護するあまり、ソフト開発を制限しかねない

しかし、著作権を含む知的財産権を保護する上で、別の角度から考慮しなければならないこともあります。知的財産権を保護するあまり、社会の発展を阻害してはならないということです。知的財産権を保護すること自体、「適正」な保護を通じて社会の発展を図ることを目的としています。著作権法に特化して言えば、著作者などの保護と第三者による文化的所産の公正利用のバランスをとりながら、文化の発展に寄与することを目的としています。一方的に保護だけを叫べばよいという単純なものではありません。そのさじ加減が難しいところです。

今回の件に即して言えば、Winnyの開発を著作権侵害として処罰するということは、映画などの著作物を保護することにはなっても、ソフト開発行為という社会的に有用な別の行為に対しては制限となります。ソフト開発行為に対する制限の影響が大きすぎるのではないかが懸念されます。

認識認容の視点に立てば、ほとんどソフト開発がほう助の可能性を持つ

東大の元助手は、著作権違反行為自体を行った正犯者との間になんら面識もなく、連絡を取り合ったこともありませんでした。しかし判決は、同助手が親族に宛てた手紙の内容や、当該ソフトが匿名サイトに公開されていたことなどをもって、当該ソフトが悪用されることを助手が認識・容認していたとして、ほう助犯の成立を認めています。

ほう助とは正犯の行為を容易にすることです。正犯者と意思を通じることは必ずしも要件とされていません。これは犯罪一般について言えることですが、犯人が犯罪結果を積極的に望む必要はなく、認識認容(それでもかまわない、と思うこと)があれば足りるとしています。この観点から見れば、今回の判決内容はこれに適合的で妥当とも思えます。また今回の裁判は、懲役1年の求刑に対し、宣告刑は罰金150万円でした。これはきわめて軽い部類に入ると言ってよいと思われます。

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