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“命令放送”で国益は守れない、NHKへの“命令”を考察

2006年11月27日

(田原 茂行=常磐大学講師)

 『視聴者が動いた 巨大NHKがなくなる』著者、田原茂行氏が、総務省によるNHKへの放送命令の意義、影響を考える。

11月10日、菅義偉総務大臣はNHK橋本元一会長に対し、「ラジオ国際放送で、北朝鮮による拉致問題に特に留意して報道することを命ずる」命令書を手渡した。取材陣に囲まれた橋本会長は「これまで通り、放送の自主、自律、番組の編成権を堅持して放送を行うことを(大臣に)申し上げた」と語った。「自主、自律」はいかにも苦し紛れに吐き出された感じだった。

外国旅行中にNHKの番組をテレビで見られるようになったのは、通信衛星が自由に使えるようになった90年代年からのこと。それまでは、短波放送による「ラジオ日本」が唯一の国際放送であった。

戦後の国際化の進行の中で、NHKは「ラジオ日本」の使用言語の拡大を進めた。現在、全世界に向けた日本語・英語の放送と、17地域向けた21言語の放送を行っている。いま問題の命令放送は、当面、このラジオ国際放送を対象としている。

自主放送と命令放送が一体となった不思議な制度運用

1950年公布の放送法は、「電波監理委員会は、NHKに国際放送実施を命令することができる」と規定した。命令放送について定めた、現在の放送法第33条の原型である。1959年の放送法改正によって、国際放送はNHKの本来業務とされ、「わが国の文化、産業の紹介、国際親善、経済交流の発展、海外同胞への適切な慰安を」目的とした。

同時に、放送法第33条は「郵政大臣は、協会に対し、放送区域、放送事項、その他必要な事項を指定して国際放送を行うべきことを…命じることができる」とし、第35条で「命令放送の費用は国が負担する」と定めた。これ以後、国際放送は、放送法第9条による「自主放送」と、第33条による「命令放送」の2本建て、という不思議な制度となった。通信衛星によるテレビ番組の供給サービス=委託放送の制度が加わってもこの点は変わっていない。

そして毎年、郵政大臣(現在は総務大臣)からNHKに渡される命令書に従い、自主放送と命令放送の両者を一体のものとして行う、という不思議な制度運用を続けてきた。具体的には、ラジオ国際放送の費用全体の約2割、2006年度では22億5600万円を国が負担している。つまり、国はラジオ国際放送についてだけ、補助金を出している形である。どこからどこまでが命令放送で、国はいかなる編集責任を持ち、何の費用を負担しているか、誰にも分からない仕組みとなっている。

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