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番号継続制度は大山鳴動鼠一匹か? 地殻変動の予兆か?(1)

2006年10月27日

(山田 肇=東洋大学経済学部教授)

 携帯電話加入者の希望は、すべて、携帯電話会社の囲い込み戦略の中に封じ込められてきた。携帯電話会社を変更しても同じ電話番号を使いたい。メールアドレスを自由に持ち運びたい。ダウンロードしたコンテンツも自由に移したい。インターネット接続時には、サードパーティの初期画面(ポータル)を用いたい。番号ポータビリティ制度によって、そこに初めて風穴が開く。

「メアドを変えたくないもの」

著者の講義を受けている学生に、携帯電話の番号ポータビリティ制度について聞くと、必ず否定的な返事が返ってくる。理由は「メアドを変えたくないもの」。

ついに始まった番号ポータビリティ制度では、音声通話用の電話番号は継続できるが、メールアドレス(メアド)は変更を迫られる。それが最大の問題だ。

携帯電話会社が発表する月額使用料の加入者平均(ARPU)は、音声通話が5000円弱でパケット通信が2000円弱。しかし、音声通話には基本料を含むため、それを除けば音声通話とパケット通信の比率はイーブン、あるいはパケット通信のほうが大きい。

総務省の研究会報告書(2004年4月公表)には「メールアドレスが変更になった時支障を感じたという利用者は、電話番号が変更になったときに支障を感じたという利用者ほど多くはないと考えられる」とあったが、今では事情が違う。

加入者がパケット通信に傾いているときに、音声通話の番号ポータビリティを打ち出しても影響は限られる。インターネット接続がまだそれほど普及していなかった時期ならともかく、今、この制度を始めても、一周遅れの感を否めない。

番号ポータビリティ制度を利用するには費用がかかる。手続き費用に加えて、移行先の携帯電話機を購入する必要がある。メアド変更の被害を少なくしようと、サードパーティのメールサービスを利用するにも利用料がかかる。せっかく蓄積していた着メロなどのコンテンツが移せないとなれば、改めてダウンロードしなければならない。利用期間に応じた料金の割引サービスが継続できないのも、加入者にとっては、費用にかかわる問題だ。

大学生協が毎年発表する「学生生活実態調査」を見ると、多くの学生はつつましい生活を営んでいることが分かる。その中で節約したい項目に挙がるのが通信費。昼食代を削って必死に確保している通信費を、これ以上増やす理由はないのだ。それは一般家庭でも同じ。一人ずつ携帯を持つようになって、家計に占める通信費の割合は確実に増加した。

番号ポータビリティ制度が始まっても、初期には動きがあるかもしれないが、すぐに落ち着き、その影響は限定的にとどまるだろう。加入者は、それほど、この制度を歓迎しているわけではないのだ。

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