「理」より「情」が働く日本のM&A〜買収提案に抗うことで株主の利益は守られるのか?
(森 摂=経済ジャーナリスト、NPO法人ユナイテッド・フィーチャー・プレス代表)
「ルイ・ヴィトン」や「グッチ」など高級ファッションブランドの基幹店が立ち並ぶ東京・表参道。いまやこの一帯は、ファッションの街であるだけではなく、「一大ブライダルゾーン」になった感がある。
今年5月にオープンしたゴシック様式の「セントグレース大聖堂」を筆頭に、ガラス張りでスタイリッシュな「ソーホーズ表参道」、「天空のチャペル」で有名な「青山ラピュタ」…結婚式場が軒を連ねる。中でも人気なのが、おしゃれなカフェ・レストランを併設した、ひときわ豪華な内装の「アニヴェルセル表参道」だ。
東京メトロ・表参道の駅から徒歩0分という好立地もあって、若いカップルにとってあこがれの場所になっている。たが、このアニヴェルセルの運営母体が、紳士服のAOKIホールディングス傘下のラヴィス(本社:東京都江東区)であることは、若い花婿や花嫁たちの多くが知らないだろう。
フタタへのM&A、金銭面も今後の戦略もAOKIの提案が理にかなって見える
そのAOKIが8月18日、九州の中堅紳士服チェーン「フタタ」に対して仕掛けたM&A(企業の合併・買収)案を撤回した。AOKIが8月7日に提案したTOB(株式の公開買い付け)と経営統合は、異例の好条件だった。7月まで1株400円台で推移していたフタタの株を1株700円、しかも現金で買い取るという。これに対抗して同業のコナカが8月17日に提示した条件は、フタタ株2.3株をコナカ株1株と交換するというもの。同日の終値で計算すると、フタタ株の価値は673円ということになる。であるにもかかわらず、フタタはAOKIではなくコナカを選んだ。
周知の通り、このM&Aでは当初から、AOKIの突然の提案に対する二田孝文・フタタ社長の戸惑いと反発があった。一方のコナカとフタタは3年半前から業務提携している。メインバンクである三井住友銀行が意見書において「コナカが統合相手としてふさわしい」としたこともあって、フタタはコナカを選んだ。
若者にワクワク感を与えるAOKIの事業戦略
AOKIとコナカの買収提案を比べると、金銭面の条件に加えて、今後の事業戦略自体にも大きな差があった。AOKIは、「カラオケ店」や「マンガ喫茶」など新業態の出店と紳士服店の新たな出店を組み合わせ、フタタの店舗数を現在の91から2割程度増やすという。
対するコナカは、あくまで紳士服店としての業態を守る姿勢だった。コナカの湖中安夫相談役は、AOKIの案は「短期的収益の上昇が見られるだけで、実際には店舗従業員の整理による失業者の山」(関連記事)と批判した。
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