AT&Tによる大型買収の行方(後編)〜期待される新サービスの迅速な展開
(トーマス・スパーゴ=米Kanabo Consulting Inc.社長)
激化するケーブル会社との競争
AT&TによるBellSouthの買収は、ケーブル会社との競争力を引き上げるという狙いも明確になっている。電気通信業界のアナリストであるJeff Kagan氏は「AT&Tによる BellSouthの買収が、国内における電話会社とケーブル会社との競争をさらに激化させるのは必至である。規模の面で見ても、従来の地域電話サービスに加えて、携帯電話、ビデオ、インターネットなどを統合したサービスを広範囲に提供するだけの力がAT&Tにはある」との見方を示している。
また、「ケーブル業界においても、地域電話会社と同様の動きが起こる」と予想する向きがある。つまり、AT&Tとの本格的な競争に出るためにケーブル会社が合従連衡する、と見るわけだ。
今回の買収は、電話会社とケーブル会社との価格競争に火を付けることになるだろう。ただし専門家の間では、競争による価格低下があったとしても、かなり先の事になると言われている。
過去を振り返ると、ケーブル会社との競争において電話会社(主にAT&TとVerizon)は、かなり挑戦的な戦略を採ってきた。例えば、将来における契約サービスの拡大を狙い、加入者に対してブロードバンドサービスを格安の値段で提供した。2005年6月、AT&T(当時のSBC Communications)は、14.95ドルでサービスを提供し始めた。続く2006年の2月には、これを12.99へと引き下げている。
電話会社は、DSLの加入者を増やし、ケーブル加入者との差を埋めることに力を入れてきた。Leichtman Research Groupの調査結果によると、 2005年、電話会社の加入者数がケーブル会社のそれを初めて上回った。
これに対抗するためケーブル会社は、回線の上り/下りの通信速度を高速化し、自社サービスに新たな機能を追加することで加入者の獲得を目指している。しかしながら、巨大化した新生AT&Tが実際に市場に姿を現せば、ケーブル会社はこうした策だけでは対抗できなくなるものと見られる。
加入者に対する影響、そして新サービスへの期待
AT&Tは現在、SBCとの合併に伴う組織の再編や、ネットワークの統合作業に奔走している。したがって、BellSouth買収による効果を消費者が実際に認識できるようになるまでには、かなりの時間がかかるだろう。SBCとの合併は非常に規模が大きく、これに関連した建物の移動や処分など、必要なタスクがまだまだ山積みである。
また、前述のとおり、地域電話会社(AT&TとBellSouth)が直接競争の関係にない点においても、消費者が即時に変化を実感する可能性は低い。
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