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AT&Tによる大型買収の行方(前編)〜戦略的買収か窮余の策か

2006年3月28日

(トーマス・スパーゴ=米Kanabo Consulting Inc.社長)

AT&Tが2006年3月5日、国内第3位の地域電話会社のBellSouthを670億ドルで買収する計画を公表した。新生AT&Tは、米国内第2位の規模を誇るVerizon Communicationsの約2倍に相当する巨大企業としてスタートを切ることになる。

AT&Tは、2005年1月にSBC Communicationsが同社を160億ドルで買収したことにより、米国最大規模の電話会社へと変貌を遂げた。現在は、国内の西部および南西部を中心とした13州でサービスを展開している。さらに今回、BellSouthとの合併によって南東部の9州を追加、合計22の州をビジネスの対象エリアとする。新生AT&Tの地域電話サービス加入者は7000万人に達し、1300億ドルの年間売上が見込まれる。

またAT&Tは、買収計画の一環として、BellSouthとの合弁企業であるCingular Wirelessの経営権も100%管理する方針を明らかにした。Cingularは現在、5400万人の加入者を抱え、米国内最大規模の携帯電話会社となっている(AT&Tは現在、同社株の6割を所有)。

買収計画に対する規制当局、消費者のとらえ方

業界関係者の間では、この買収計画をFCC(米連邦通信委員会)が承認するとの見方が主流だ。しかし、2005年1月のSBC/AT&Tの合併に反対した消費者団体は、今回の買収計画に関しても「電気通信市場の統合が過度に進行している。その結果、消費者には、ほとんど選択の余地が無くなる」と懸念している。「電気通信産業における独占を回避するよう、1984年にAT&Tを分割した。このときの目的に矛盾する」との指摘である。

しかしながら、規制当局側はこうした反対意見を退け、AT&Tの組織改革に向けた新たな動きを擁護するものと見られる。その背景には、地域電話会社が、同業者間で直接的な競争を展開していない事実がある。原則として国内の異なる地域でサービスを提供しているからだ。

また、大型合併を擁護する人々は、電話会社とケーブル会社とが激しい競争状態にある点も理由に挙げている。ケーブル会社は、テレビと高速インターネット接続サービスに加え、IP電話も提供している。この電話会社とケーブル会社との激化する競争に生き残ろうと、AT&TもVerizonも、放送事業を念頭に置いた自社ネットワークの再構築に過去2年間にわたって数十億ドルを投入している。

電気通信産業にもらたす影響

AT&Tによる大型合併は、業界全体に影響を及ぼすものと見られる。例えば、1984年にAT&Tを分割してできた地域電話会社「Baby Bell」の1社であり、現在は業界第4位のQwest Communicationsを、Verizonが買収せざるを得なくなる可能性もある。新生AT&Tとの規模の差を、詰めるためだ。

next: AT&Tの課題は、BellSouthの買収では解決しない…

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