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クアドラプルプレーを目指す米AT&T(3)〜BellSouth買収がわが国の通信市場に示唆する

2006年3月22日

(新保 豊=日本総合研究所 研究事業本部 主席研究員、通信メディア・ハイテク戦略クラスター長)

日本とは異なる産業構造、そして競争構造

AT&TによるBellSouth買収がわが国の通信市場に示唆するものを挙げておきたい。

新・新AT&TもSBCも、ともに地域独占事業(アクセスライン)を持った上で熾烈(しれつ)な競争をしている。そして、データ通信や携帯電話による通信などでは、寡占市場を形成している。つまり、米国の通信産業構造の基本として、「独占+寡占」のフレームがあるのだ。ここはわが国と大きく異なる。

NTT東西とまともに競争できているのは、ADSL市場におけるソフトバンクBBぐらいだ。NTT東西が38%(東21%、西17%)、ソフトバンクBBが35%とシェアが拮抗している(2004年9月時点)。NTTの競合企業が比較的健闘していると言われているFTTH市場でも、NTT東西が59%(東31%、西28%)に対して、電力系すべてを合わせても、たかだか14.5%にすぎない(2004年12月末)。しかも、電力系通信会社の場合は「親会社である電力会社から、内部相互サポートのようなものがあるのではないか」との指摘がある。米国のようなダイナミズムは認められない。

また、CATV会社はとてもNTTの競争相手になっていない。ソフトバンクBBが展開する「BBフォン」や「KDDIメタルプラス」といった直収電話も、いまだ地域通信市場を切り崩すほどの勢いはない。つまり、日本の地域通信市場では、アクセスラインが、NTT東西に事実上押さえられている。NTT東西の独占状況が続いているのである。米国のように、競争の土俵を一にする競争軸は、実際には存在しない。この日米の違いは大きい。

さてここで、「AT&Tの失策の主たる要因は、地域通信を分離したことであった。地域通信網をしっかりと保持し続けることが重要だったのである。だからこそ、地域通信(アクセスライン)を業とするVerizonもSBCも生き残った。したがって、わが国のドミナントキャリアにおいても、地域通信を死守することが不可欠だ」という論について考えてみたい。アクセスラインを分離せよなどと言うのは「周回遅れの見方」である、という論だ。

むしろ「周回“進み”の見方」

この論は的外れだ。賢明な読者であれば、もうお分かりであろう。そもそも日本は、米国と同じレース(公正かつ公平な競争)ができる競技場(市場構造)にはなっていないのだ。もちろん、同じレースを目指すことは大事であるが、同じ競技場(競争構造)を創れるか、創るべきかは、異なった議論だ。

next: BBCはアクセスラインを事実上分離…

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