AT&Tのベルサウス買収で寡占が進む米通信業界
(林 紘一郎=情報セキュリティ大学院大学副学長・教授)
(清水 憲人=情報通信総合研究所 グローバル研究グループ 主任研究員)
旧AT&T勢力の再結集〜様々な市場で全米No.1事業者に
2006年3月5日、米国の大手通信事業者AT&Tが米ベルサウスの買収を発表した。ここでいう「AT&T」は、1984年に当時支配的通信事業者であったAT&Tを分割して誕生した七つの地域電話会社の一つであるサウスウェスタン・ベルが、その後M&Aを繰り返した後、昨年11月に長距離通信事業者AT&Tを買収してそのブランドを引き継いだ会社である。また買収される側のベルサウスも同様に、1984年のAT&T分割で誕生した地域電話会社の一つである(図1参照)。

1984年に長距離通信事業者1社、地域電話会社7社に分割された旧AT&Tは、今回の買収で、AT&T、ベライゾン、クエストの3社に統合される。クエストについては今後の買収ターゲットと目されており、最終的には2社に統合される可能性もある。
AT&Tは現在、長距離通信市場では米国最大、地域電話市場ではベライゾンに次ぐ第2位、ブロードバンド市場ではケーブルTV事業者コムキャストに次ぐ第2位である。これが、ベルサウスを買収することでいずれの市場でも1位になる。また、AT&Tとベルサウスは米国最大の携帯電話会社シンギュラー・ワイヤレスを合弁会社(出資比率はAT&Tが60%、ベルサウスが40%)として運営している。本買収によって、これも完全子会社とすることができる。
すなわち、買収完了後のAT&Tは固定電話・携帯電話・ブロードバンドの全市場において、全米最大の存在になるということだ。
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