なぜ上場企業が上場廃止の道を選ぶのか(2)
(来生 悠=証券アナリスト)
前回は、上場廃止に踏み切る第一のケースとして、会社再建を挙げた。上場を維持しつつ新規のスポンサーから資金調達し、再建できる会社はあまり多くない。つまり、会社の再建に必要な費用を捻出する力が十分でなく、かつ、「再建成功の確率がそこそこ高い」ことを広い範囲の株主に納得させることが難しい場合、上場を廃止することが多い。そして、「企業再生ファンド」の出資を仰ぐのである。
非上場化で会社を再建するとは
企業再生ファンドは、既存の株主から株式を買い取り、かつ再建に必要な資金を新規に注入する。「上場していない企業に投資する」ので、プライベート・エクイティ・ファンドと呼ばれることもある。サーベラスやリップルウッド、カーライルなどが有名だ。海外でも活躍するこれらのファンドの名前は、多くの人が耳にしたことがあるだろう。
これらのファンドは企業再建を専門としている。業績悪化で株価が低迷した企業の株式を買い取り、追加資金を注入し、経営陣を送り込んで会社を立て直すことに特化している。通常は、会社そのものが投資するのではなく、投資組合の形でいくつも独立のファンドを傘下に組成し、その資金を利用して企業再生を手がける。
業績が悪化し株価が大幅に低下したところで買収し、数年後、業績を立て直した後に再上場、売却することで利益を上げる。このため、「ハゲタカファンド」などと陰口を叩かれることもある。しかし実際は、資金集めのネットワーク、株式市場や銀行から見放されかけた企業の再建可能性を吟味する調査能力、有能な経営者候補(またはそのネットワーク)を多く抱え、その上でハイリスク・ハイリターンの投資を行うプロフェッショナル集団である。
再建のために上場廃止するのには、もう一つ理由がある。改革の素早い決定と実行だ。例えば、コア事業から撤退したり、規模の大きな資産売却をする場合、株主総会の決議が必要になるケースがある。上場していると多数の株主に提案内容を送付し、広い会場を確保し、過半数の出席もしくは賛成票を確保し…といった具合に、手間、時間、費用が膨大にかかる。また決定後は、その内容を速やかに公表しなければならない。非上場ならば、株主が数は格段に少なくなり、これらの負担が一挙に軽くなる。
注意しなければならないのは、再生ファンドは最終的には株式をだれかに売却し、そこで利益を得ることでリターンを得ることである。つまり、ある程度の期間(通常は3年〜7年程度)がたった後には、再上場もしくは他社への売却という出口(エグジット)が必ず必要になる。その意味で、再生ファンドの出資を受けた企業は、「倒産せずに済んだ」、「買収されずに済んだ」と安心してはいられない。「劇薬」なのである。
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