このページの本文へ
ここから本文です

適正な会計監査には独立した報酬と調査権限が必要

2005年10月13日

(田村 繁和=公認会計士・税理士)

「何年かに一度、必ず」と言っていいほど、粉飾決算事件が新聞を賑わせる。なかでも今回のカネボウの事件は、公認会計士が4人逮捕されるなど「過去最大」と言われている。

国税局の税務調査と公認会計士監査との違い

なぜ、このような粉飾決算事件が後を絶たないのか? 税務調査と公認会計士監査の両方を手掛けてきた私自身の経験を下に、その背景を分析する。

粉飾決算が起きる原因の第1は、公認会計士に調査権限が与えられていないことだ。税務調査と会計監査は、「決算書の妥当性を検証する」という意味では、どちらも同じだ。しかし会計監査は、国家権力の背景がないため、調査手法に限界がある。

税務調査は、脱税の発見を目的に、税務署が調査先を選定し、国の費用で行う。国家権力の下で、非常に幅広い調査手法を選択できる。いっぽう会計監査は、決算が適正かどうかの意見表明をするもの。企業が監査法人を選定して、企業の費用で行う。調査方法には、おのずと限界がある。

会計監査には、税務調査のような法的権限がない

学生時代に会計学を専攻していた私は、監査論の授業で「決算書の妥当性を判断するためには、現金や受取手形であれば現物と突合する。売り上げや経費であれば領収書や請求書と照合する」と教えられた。会計士とは、社会的使命を持った素晴らしい仕事だと感激した。

その後、私は、税務署で法人税の調査をする仕事に就いた。税務署では、私より若い調査官がバリバリ仕事をして不正を発見していた。いっぽう私は、会計理論や高邁な監査論を勉強したにもかかわらず、いつまでたっても決算書の不正を発見できなかった。

そして、ある日、ついに上司から状況報告を求められた。私が「売り上げや経費についてはすべて領収書や請求書があり、正しいと思います」と答えると、上司から「何を考えて仕事をしているんだ!」という罵声が飛んできた。上司は「領収書がきちんとあるのは当り前。それが本当かどうかを見破るのが、本当の調査なのだ」と続けた。

税務署は、「反面調査」によって不正の裏づけを行う。例えば企業が、実際には決算をしめる月に商品を納めているのに、納品書の日付を翌月にする場合がある。売り上げの計上を遅らせることで赤字を装い、税金逃れを図る場合などだ。こうした場合は、販売先を調査して、決算月に納入されている帳簿を確認する。こうした反面調査を実施すれば、翌月に売上計上していた嘘が簡単に見破れるのである。

next: さらに、銀行を調査する権限も…

(全 2 ページ中 1 ページ目を表示)

あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください

記事検索 オプション

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る