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なぜ上場企業が上場廃止の道を選ぶのか(1

2005年10月11日

(来生 悠=証券アナリスト)

最近、ワールド、ポッカコーポレーションなど、上場を廃止してプライベート・カンパニーになる企業が増えている。上場廃止は企業や株主にとってどういう意味を持つのか、整理してみよう。

上場を廃止する四つの理由

一口に「上場廃止」と言っても、その理由はいろいろだ。その是非は後ほど述べるとして、私は四つに大別できると思っている。(1)会社再建、(2)グループ再編、(3)長期的視野の経営および投資、(4)不祥事によるペナルティだ。

虚偽の会計報告をするなど法的な問題を起こしたペナルティとして上場廃止を強いられた西武鉄道、カネボウなどが(4)に該当する。今回はこの(4)を除外して、企業が自ら意図して上場廃止を選択するケースを取り上げることにする。

上場廃止は会社を「生まれ変わらせる」ための手段

まずは、これまでの上場廃止の例が上の(1)、(2)、(3)のどこに分類できるか、整理してみよう。

会社再建

つい最近、再生ファンドの支援を受けて上場廃止に踏み切ったポッカコーポレーションが(1)の会社再建に該当する。再生機構の下で上場廃止し、後に再上場した新生銀行もこのケースに当てはまるだろう。

なぜ会社再建のために上場廃止が必要なのか。

企業の再建には「金」が必要だ。競争力を再強化するには、設備投資などに多額の資金が必要となる。リストラにも金がかかる。早期退職などで従業員数を減らすためには、退職金を上乗せしなければならない。在庫や設備の減損を行うにしても、一定規模の資金が必要になる。財務状況が弱った状態でリストラを強行すれば、債務超過に陥り、キャッシュが不足して倒産する羽目に陥る。皮肉な話だが、資金が足りないから再建が必要なのに、金が無いとリストラができないのである。

とすれば、生き延びるためにはどこかから新しく資金を調達しなければならない。しかし、業績が悪化して株価が低迷している企業が公募増資をしようものなら、株価がさらに下落する。企業の価値が変わらないのに、発行株式数が増えれば、1株当たりの企業価値が減少するからだ。これに伴って1株当たりの調達額も減少。結果として、必要な額を集められないか、または非常に安い価格で大量の株式を発行することになってしまう。市場は、1株あたりの企業価値が低下すること(これを希薄化と呼ぶ)に対しては非常に厳しいのである。

不特定多数を対象にした公募増資とは別の選択肢として、第三者割当増資をすることが考えられる。特定の支援企業を見つけて、その1社または数社に対して株式を発行する方法だ。この場合、公募増資をする場合に比べて、市場の反応がマイルドになることが多い。安定した支援者(通常は支援企業)が現れたと判断されるからだ。だが、それでも株数が増えれば株価が下落することが多い。それは、たとえ一時的なものであっても、支援企業にとっては投資価値の目減りを意味する。支援企業は通常、数年間のスパンで再建計画を立てている。とは言え、株価の下落は歓迎される事態ではない。

上場を維持し、第三者割当増資で再建を乗り切った企業の例としては、米ウォルマートに支援を仰いだ西友(まだ「乗り切った」とは言えないかもしれないが…)、米ゴールドマン・サックスから資金を調達した三井住友銀行などが挙げられる。ルノーの支援を受けて再建を達成した日産自動車などもこのケースに当てはまるだろう。

どの企業も、知名度が高く、それなりの顧客基盤を持ち、資金注入と改革で再び競争力を取り戻せることがある程度高い確率で期待できた。このため、支援を企業にとっても既存株主にとっても、株価の下落が許容範囲で済んだわけだ。

では、公募増資も第三者割当増資もできない企業はどうするか。それが上場廃止である。資金調達が難しい企業のための最後の手段と言える。

「なぜ上場企業が上場廃止の道を選ぶのか」は2回連載です。(2)は20日(木)に公開する予定です。

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