今回も、ボールを受けた格好のTBS側が、楽天の提案通りの経営統合を受け入れる可能性は低い。提案を拒絶した場合、楽天はさらに株式を買い進めるか敵対的買収であることを露わにしてTOB(株式公開買い付け)をかけるだろう。楽天が持ち株比率20%以上まで株式を買い進めた場合、TBSは財界の重鎮7人からなる企業価値評価特別委員会に諮って、新株予約権の発行などの防衛策をとることになる。
だが、委員会のメンバーには西川善文・三井住友銀行前頭取をはじめ、一橋大学出身で日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)OBの三木谷会長兼社長の財界人脈に連なる人物が少なくない。彼らが楽天支持に回れば、TBSは事実上、対抗策を封じられることになる。既に財界への根回しを済ませたと言われる三木谷会長兼社長は、「全財産を賭けてでも進める」と経営統合に自信を深めている。それだけにTBSも、楽天の提案を簡単には拒絶できそうにない。
最後に喜ぶのは三木谷氏と投資銀行か?
最も可能性が高そうなのは、TBSと楽天が交渉を続け、落としどころを探ることだろう。楽天にしても、無理押しすればTBSの現場社員の反発を買うのは必至。それでは、ただでさえ難しい急速な収益増がますます期待できなくなってしまう。とはいえ、楽天に残された時間はそれほど多くない。880億円を借り入れで調達したため、金利負担が重くのしかかってくる。何より、交渉が長引けば、それを株式市場が嫌気して楽天の株価急落につながる可能性がある。
TBS、楽天とも、三木谷会長兼社長の心中と時間の経過をともに慮りながら、微妙な交渉を続けることになるはずだ。
だが、どんな形であれ経営統合が成って喜ぶのは、おそらく三木谷会長兼社長と、手数料収入が見込めるゴールドマン・サックス証券などの投資銀行だけだろう。TBSの現場の士気は下がり、番組の質の低下という形で視聴者に負の影響を及ぼす可能性が高い。よしんばCM放送とネット販売の融合といった新しいビジネスモデルが成立し、結果として視聴者が恩恵を被ったとしても、それは、楽天とTBSの経営統合がなくても実現したであろうことだ。
今回の問題を通して、資本の論理とはまさに強者の論理であり、成長期待を煽って高株価を謳歌する新興ネット企業がその体現者であるという事実が明瞭に浮かび上がってきた…と見るのは皮相的に過ぎるだろうか。
■織田 篤(おりた・あつし)氏のプロフィール
1965年生まれ。1989年に早稲田大学卒業後、某出版社へ入社。複数の雑誌の編集業
務を手がける傍ら、IT業界、メディア業界などを幅広く取材している。
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