楽天・三木谷氏の胸のうち(1)〜巨額の時価総額が生み出した三木谷氏の焦りが引き金
(織田 篤=ジャーナリスト)
楽天が、借り入れで調達した約880億円を投じてTBS(東京放送)株式の15%強を買い集めた。そのうえで、共同持ち株会社を設立してその傘下に両社をぶら下げる形での経営統合を提案し、話題を集めている。
今年2月ころから楽天と事業提携の可能性について交渉してきたTBS側は、突然の株式買い占めと経営統合の申し入れに戸惑いを隠せず、楽天の要望をすんなり呑みそうにはない。楽天は、資本の論理を前面に出して失敗したライブドアのケースを反面教師に、表向きは「敵対的買収ではない。ともに手を携え、世界的メディアグループの設立を目指す」と強調して、友好ムードを演出することに躍起となっている。だが、TBSが提案を呑まなければ、資本の論理にモノを言わせた力づくでの買収も辞さない構えだ。
なぜ、楽天は巨額の資金を借り入れてまで、TBSの取り込みを図らなければならなかったのか…。三木谷浩史・楽天会長兼社長の胸に巣くう“焦り”こそが、その真の理由と考えられる。
常に成長しなければ、株式市場と顧客に見放されてしまう
新興のネット企業の中で、楽天は「勝ち組」である。2004年12月期の連結売上高は、455億6700万円(前期比152%増)、経常利益は154億7400万円(同249%増)に達する。2005年12月期にはそれぞれ900億円(同98%増)、260億円(同68%増)にまで伸びる見込みだ。立派な業績である。
しかし、三木谷会長兼社長にとって、コトはそう簡単ではない。楽天の株式時価総額は1兆円を超える。連結売上高が1000億円にも満たない企業規模からすると、過大な評価と言ってよい。これはひとえに、ネット企業の勝ち組である楽天の急成長を株式市場が期待しているからにほかならない。ひとたび成長の歩みが鈍ろうものなら、株主は楽天株を手放し、株価は急降下する。
楽天の顧客の大半は個人、つまり時流に流されやすい消費者である。株価急降下となれば、株主ばかりか顧客までが楽天を離れ、これまで順調に伸びてきた電子商取引事業と金融事業の足を引っ張る可能性が高い。個人と会社の名義と合わせて夫妻で楽天株の52%弱を持つ三木谷会長兼社長にとっても、由々しい事態である。
言い換えれば、楽天は馬車馬のように「急成長街道」を走り続けなければ、企業として成り立たない構図に陥っているのだ。普通に考えれば、主力の電子商取引事業と金融事業だけで、企業としての成長は十分見込める。だが、それだけでは、ポータル事業とオークション事業を軸にネットメディアとして優位を保つヤフーの後塵を拝する「万年2位」の座を脱することはできない。それでは株式市場が、そして三木谷会長兼社長自身が、満足できないのである。
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