COTSはシャトル代替の有人輸送手段にはならない
2004年1月、ブッシュ大統領は新宇宙政策を発表し、アメリカの有人宇宙開発の柱をシャトルとISSから有人月探査へと転換した。2010年までにISSを完成させ、完成と共にシャトルは引退。ISSは2015会計年度末までで運用を終了。代わって月との往復に使えるカプセル型有人宇宙船「オリオン」を開発し、2010年代後半に恒久的有人月基地を建設、運用を開始するというものだった。
米航空宇宙局(NASA)はこの政策に沿ってシャトル運用を見直し、2008年9月現在、2010年9月末までにあと10回の打ち上げを行い、引退させる予定となっている。2008年はすでに3回の打ち上げを行っており、あと2回の合計5回を予定。2009年は5回、2010年は3回の予定だ。最終打ち上げは2010年5月となっている。
NASAは、オリオン運行開始までの有人宇宙輸送システムの空白を埋めるために、Commercial Orbital Transportation Services (COTS) という計画を立ち上げた。これはベンチャー系の民間企業に資金を提供して、ISSへ人員や物資を輸送する宇宙船の自主的な開発を促進するというもので、完成の暁にはNASAが宇宙船の運行を買い上げることになっている。COTSは、2回のメーカー選定を経て、現在オービタル・サイエンス社(OSC)と、スペース・エクポラレーション(スペースX)社が参加している。
しかし、宇宙関係者で、COTSによって有人宇宙船が完成すると考えている者は少ない。OSCは、1980年代に創設された新興企業で、「ペガサス」有翼ロケットや、通信衛星、地球観測衛星などの開発経験を持つ。しかし、これまで有人宇宙システムの開発に参加したことはない。スペースX社は、現在商業打ち上げ市場への参入を目指して「ファルコンI」ロケットを開発中のベンチャー企業だ。有人宇宙システムはおろか、無人の宇宙システムすら完成させたことはない。これまでファルコンIロケットは3回の試験打ち上げを行ったが、すべて失敗している。
COTSは、米ベンチャー企業にNASAから技術開発のための資金を流すための計画であろう。長期的にはアメリカの宇宙産業の競争力強化に意味があるが、目前に迫ったシャトル引退に合わせて有人宇宙船を提供できる計画ではない。

オービタル・サイエンス社がCOTSで開発する「シグナス」貨物輸送船がISSにアプローチしている想像図(Photo by OSC)

スペースX社が開発する「ドラゴン」有人宇宙船想像図(Photo by SpaceX)
(全 6 ページ中 2 ページ目を表示)
あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください
この連載のバックナンバー バックナンバー一覧へ 画面先頭に戻る
- 気になる「アレスI」の振動問題 (2008/09/25)
- 表面化したスペースシャトル引退延期 (2008/09/18)
- 浮上するGXロケットの安全保障用途転用 (2008/09/05)
- 浮上するGXロケットの安全保障用途転用 意外に多い利点、民生と安全保障を分離 (2008/08/29)
- 遅れるシャトル運航、ISSはサドンデス状態に(2) (2008/02/18)

