戦略的に米ロと依存の関係を作る
しかし、GXを安全保障用途のみに使うとなると、話は変わってくる。
安全保障には相互依存という考え方がある。敵対する可能性のある国同士がお互いに資源や経済などで依存し、何かあった時に極端な行動に出にくい体制を作り上げるというものだ。
この考え方は、防衛用の装備品にも適用できる。アトラスVの第1段はロシア製のRD-180エンジンを採用し、なおかつアメリカ国防総省の衛星も打ち上げている。このような依存は、ロシアに一定の安心感を与え、国際的な緊張を緩和する効果がある。もっともアメリカはその一方でRD-180の国産化も進め、「製造能力を保持しつつもロシアからエンジンを買う」という戦略をとっている。
そのRD-180を使用するアトラスVの第1段をロッキード・マーチンから購入してGXを作り、アメリカの基地から安全保障関連の衛星を打ち上げれば、日本の安全保障政策が宇宙利用を進めることに対してアメリカが抱くかも知れない疑念を緩和することができる。また、アメリカを通じてエンジンを供給しているロシアに対しても、疑念を緩和する効果がある。
この場合H-IIAを保有しているということが、両国への牽制となる。いざとなればH-IIAでも打ち上げることが可能なので、「日本国内で勝手に打ち上げられるよりも、影響力の及ぶGXでの打ち上げを容認したほうがよい」ということになるわけだ。
情報収集衛星で種子島・内之浦に広がる“しらけ”ムード
安全保障用途の衛星をアメリカから打ち上げることは、種子島と内之浦という2つの射場を持つ鹿児島県にも良い効果をもたらす。2003年から始まった情報収集衛星の打ち上げ以降、内閣府は射場のセキュリティ管理に過剰なまでの関心を寄せ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や地元に、管理の徹底を指示している。
しかし、現場の状況をよく知らない内閣府がやみくもに「厳重に」という指示を出した結果、今や地元の自治体や住民の間では、ある種の「しらけ」ムードが広がっている。
種子島はセンターの中を生活道路が通っているし、海岸線はアワビなどの漁場となっている。内之浦でも住民の生活の動線がセンター内を通っていた。そもそも種子島も内之浦も、もともと住民が住んでいる場所に「国の政策だから是非ともこの場所を使わせてくれ」と地元に頭を下げて建設した施設であり、住民も「それでは仕方がない」と思いつつ共存するうちに「地元の誇り」「地元にお金を落とすありがたい設備」と思うようになったといいう経緯がある。
内閣府が望むような徹底した機密保持やテロリスト対策は、成り立ちからしても、地形や土地利用からしても本質的に不可能である。
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