現状は以下の通り分析できるだろう。
(1)については、開発遅れによる大幅な予算超過と、当初目標に比べれば大幅な性能低下を起こしてはいるが、どうやらメドが得られつつある。もっとしっかりと基礎研究を先行して実施していれば、ここまでの予算超過と性能低下は起こさなかったろうが、ともあれ「どうやらエンジンを完成させることができそうだ」というところまでは来ている状況だ。
GXの第2段エンジンは、日本にとって最初のLNGを使用するエンジンだ。今後LNGを、現在H-IIAロケットで採用している液体水素並みに使いこなすつもりならば、さらなる新エンジンの開発とそのための投資が必須となる。
(2)の判断は微妙だ。第1段が、生産を終了したアトラス3から現行のより大きいアトラスVに変更されたことにより、ロッキード・マーチンのシェアは増加した。アトラスVはロッキード・マーチンの現行主力ロケットであり、ボーイングのデルタ4と共に、軍民を問わずアメリカの無人打ち上げを担う主力機だ。アトラスVの第1段を使うということは、アメリカにとっての虎の子を利用するということである。また、開発費用低減のために、アメリカ空軍のバンデンバーグ基地(カリフォルニア州)にあるアトラスV用射点を改修してGXに利用する案が浮上している。今後GXの開発を継続するならばロッキード・マーチン社に対する依存の度合は増える。「国産商業ロケットの開発」という観点では失敗だが、「ロッキード・マーチンをIHIの間で緊密な関係を作る」という点では前進である。
GXの第1段は、当初アトラスIIIのものを利用する予定だったが、ロッキード・マーチンが製造ラインを閉じたために、より大型のアトラスVの第1段への変更を余儀なくされた。これによりどのような設計変更が必要になるかを示した図。この図が宇宙開発委員会に提出された時点では、まだ機体コンフィギュレーションが確定していない(宇宙開発委員会推進部会・GXロケット評価小委員会、平成20年5月15日提出資料「今後のGXロケット開発に係わる検討状況」より)。(拡大)
(3)に関しては、かなり壊滅的な状況だ。過去14機の打ち上げ実績を持つH-IIAロケットも、国際市場からの衛星打ち上げを受注できないでいる現在、新規開発の第2段を使用するGXロケットが、民間市場から衛星打ち上げを受注できる可能性はほとんどないと考えて間違いはない。
GXロケット評価小委員会には、2008年以降、イリジウム、グローバルスターなどの非静止通信衛星群の代替打ち上げが必要で、打ち上げ需要が発生するという資料が提出されている。しかし、それもGXが打ち上げを通じて十分な信頼性を実証し、なおかつライバルに対抗できる低価格を提示できればの話だ。世界的にロケットが供給過剰になっている現在、多少の需要は実績のある海外ロケットが吸収すると見るのが妥当だろう。
「開発予算は大幅超過、商業市場での見込みなし」というのが、GXを中止すべきという意見の根拠となっている。
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