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幸いにして2010年以降、このようなロケットを必要とするペイロードも存在している。M-Vロケット廃止の結果、日本の科学衛星はH-IIAで打ち上げることになった。ところが、日本の科学衛星にとってH-IIAは能力過大である。さらにH-IIAは、あまりに静止軌道打ち上げと極軌道打ち上げに最適化されているので、科学衛星が要求する特殊な軌道への打ち上げが苦手なのだ。

何度も再着火可能な第2段があれば、これら科学衛星の打ち上げを容易に行うことが可能になる。ただし、H-IIA用キックモーターは現在、別途検討が進んでいる。「あちらとこちらの計画をまとめて、一緒にする」というのは、一見予算を節約できるように思えるが、結果としてどちらにも役立たない失敗作を生む危険性をはらむ。具体的な検討は、よほど慎重に行う必要がある・

もちろん、H-IIAの第2段をリプレイスするにせよ、第3段のキックモーターを開発するにせよ、打ち上げコストは相対的に高くなる。この部分は、技術開発の失敗を償うとして歯を食いしばって耐えるしかないだろう。

「LNG推進系飛行実証プロジェクト」によりLNGエンジンの基本的なノウハウを手に入れたなら、次はより大型の、ブースター用エンジンの開発ということになる。

こちらは現在JAXAで検討中のH-IIAの次世代となる次期基幹ロケットとの絡みも出てくるので、より慎重に時間をかけて検討する必要があるだろう。

次期基幹ロケットとLNGエンジンとの絡みで押さえておかねばならない技術的要点はただひとつである。

第1段とブースターには液体水素よりもLNGのほうが向いているということだ。

液体水素は比推力という性能の指標が高く、LNGより高性能だ。これは間違いない。しかし第1段とブースターにとって重要なのは比推力以上に推力なのである。LNGは、液体水素よりも大推力を出すのに向いている。さらには密度がずっと液体水素よりも高いので、第1段を小さく作ることも可能になる。これはロケットのコストダウンにもつながる。

あまりに高く付いたGXの失敗から教訓を引き出すならば、「宇宙をなめてはいけない」と言うことに尽きる。宇宙に出て行くということは、今なお困難な事業だ。目標を絞り、技術的に考え抜き、ベストを尽くさなければ成功することはできない。

予算とか、政策とか、ワーキングシェアとか、官庁への説明とか、組織の一貫性とか──そういった地上のよしなしごとに技術を従属させて歪めると、待っているのは失敗なのだ。

(この項おわり)

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション・ライター。 1962年、東京都出身。日経BP社記者として、1988年〜1992年に宇宙開発の取材に従事。主に航空宇宙分野で執筆活動を行っている。著書に『われらの有人宇宙船』(裳華房)、『国産ロケットはなぜ墜ちるのか』(日経BP社)、火星探査機『のぞみ』の開発と運用を追った『恐るべき旅路』(朝日ソノラマ)、スペースシャトルの設計が抱える問題点を指摘した『スペースシャトルの落日』(エクスナレッジ)などがある。

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