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その一方で、衛星情報センターは、一切の情報公開に対して圧力をかけ続けている。

2005年11月の小惑星探査機「はやぶさ」の小惑星イトカワ着陸では、「はやぶさ」に搭載されたアメリカ製のリアクション・ホイール(衛星の姿勢を保つ重要な部品)が故障を起こした。これに関連してJAXAホームページには、「情報収集衛星もアメリカ製のホイールを積んでいるが」云々という趣旨の投稿が掲載された。すると衛星情報センターはJAXAに「掲載は好ましくない」と申し入れ、削除させた。

実際問題として、情報収集衛星の製造にあたってアメリカから大量のリアクション・ホイールを輸入したことは、衛星メーカーの周辺では公知の事実となっていた。

一定のデータ公開を考える時期ではないか

そもそも情報収集衛星が取得した画像を秘匿することで隠蔽できるのは、センサーの性能だけである。そして情報収集衛星のセンサーの性能は、アメリカの商用地球観測衛星のそれに劣る。アメリカの商用地球観測衛星が、分解能60cmの性能を達成している今、情報収集衛星の取得画像を秘匿する理由は薄い。

情報収集衛星の意義は、日本が主体的に「いつ、どこを撮影するか」を決めることができるということだ。「いつ」に関しては「回帰周期4日の準回帰太陽同期軌道」ということでかなり分かってしまっているが、「どこを撮影しているか」については、偵察対象国に十分なプレッシャーとなりうる。

このように考えると、情報収集衛星の取得したデータは、「撮影ポイントは日本国内に限る」あるいは「取得日時から一定時間を経た後に公開する」というような条件を付けて公開し、官公庁や民間のデータ利用を促進したほうが、システム全体のコストパフォーマンスがあがるように思える。

データが公開されることによって、初めて「データを利用してみようか」という機運も生まれるし、初代の衛星のどこが悪く、今後どうするべきかということも十分議論されるようになるはずだ。衛星情報センターが「これが役立つはず」とお仕着せの解析結果を出すだけでは、「武家の商法」となる可能性がある。

すべてを秘匿するというのは多分に公安警察の組織運用スタイルであろうが、このままでは情報収集衛星は「5050億円を突っ込んだ、公安の高価なおもちゃ」で終わる可能性がある。

すぐに方針を変えることができないというならば、次世代衛星の運用開始後に初代衛星の取得データを公開するということも考えられるだろう。今回打ち上げられた「光学3号機実証衛星」を皮切りに、政府は2009年と20011年に、分解能を向上させた次世代光学衛星を打ち上げるとしている。これらの運用開始を待って、現在の衛星が取得したデータを公開することぐらいは考えてもいいはずである。

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション・ライター。 1962年、東京都出身。日経BP社記者として、1988年〜1992年に宇宙開発の取材に従事。主に航空宇宙分野で執筆活動を行っている。著書に『われらの有人宇宙船』(裳華房)、『国産ロケットはなぜ墜ちるのか』(日経BP社)、火星探査機『のぞみ』の開発と運用を追った『恐るべき旅路』(朝日ソノラマ)、スペースシャトルの設計が抱える問題点を指摘した『スペースシャトルの落日』(エクスナレッジ)などがある。

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