低コスト化で岐路に立つM-Vロケット(4)〜顧客である衛星のために欠点補う改良を
欧州は、2008年以降、大型の「アリアン5」ロケット、中型の「ソユーズ」ロケット、小型で固体の「ヴェガ」ロケットを使い分けていくという方針を明らかにしている。科学ミッションの打ち上げは「ソユーズ」で行う。
「ソユーズ」とM-Vを比較すると、M-Vの欠点が見えてくる。M-Vは確かに高性能の全段固体ロケットだが、その欠点は高コストというだけではない。打ち上げ時の環境は過酷で、衛星を目的の軌道に投入するにあたっての柔軟性に欠ける。
徹底した最適化を施してあるという基本的な性能の高さをそのままに、低コスト化に加えて欠点の解消を図るならば、日本は強力な打ち上げ手段を得ることになるはずだ。それは同時に、ペンシルロケット以降、数々の失敗を経ながら自助努力で積み上げ、作り上げてきた計画管理の手法──宇宙研方式をオールJAXA(宇宙航空研究開発機構)で共有するということでもある。
柔軟な打ち上げ能力を持つソユーズFG/フレガート
欧州は現在、アリアン5(打ち上げ能力は地球低軌道に最大21t)、ロシア製のソユーズ(同7t)、イタリアが中心になって開発中のヴェガ(同1.5t)を保有している。2008年以降は、年間、アリアン5を5機、ソユーズを3機、ヴェガを1機打ち上げていく予定だ。その内訳はアリアン5の5機が商業打ち上げ、ソユーズの3機が商業打ち上げと科学ミッション、そしてヴェガの1機が政府需要だという。ヴェガの政府需要とは、おそらく軍の技術試験衛星を指しているものと思われる。

ソユーズロケットによる金星探査機「ビーナス・エクスプレス」の打ち上げ。何度も再着火できる上段「フレガート」を使い、様々な軌道に柔軟に探査機を送り込む能力を持つ。
ここでは、欧州が科学ミッションに使うソユーズに注目する。科学衛星打ち上げに使うソユーズは、「フレガート」という上段を第4段として組みあせた「ソユーズFG/フレガート」という形式だ。これまでに、火星探査機「マーズ・エクスプレス」、金星探査機「ビーナス・エクスプレス」、欧州の測位衛星システム「ガリレオ」の試験衛星「GIOVE」衛星2機などを打ち上げている。
この形式の特徴は、何度も再着火が可能なフレガート上段により様々な軌道に対してペイロードを投入可能というところにある。科学衛星は、個々の観測目的に応じた多様な軌道に投入される。打ち上げニーズに応じるためには、ロケット側は柔軟な打ち上げシーケンスを設計できる能力を持つ必要がある。
next: M-Vの欠点は、柔軟性の不足と厳しい振動条件…
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