低コスト化で岐路に立つM-Vロケット(3)〜問題の根本は情報収集衛星による予算不足
様々な問題を抱え、このまま行けば失敗作路線一直線のM-V低コスト化案だが、若干の修正でそのまま開発フェーズ入りすると見る関係者は多い。ロケット開発の組織的な主導権も予算も、筑波宇宙センターにある宇宙基幹システム本部に移っているからだ。
ここまでM-Vが追いつめられた根本には、日本の宇宙科学が予算不足によって退潮を余儀なくされているという事実がある。1980年代以降、宇宙科学研究所は、科学衛星を毎年1機打ち上げてきた。ところが宇宙三機関統合以降、そのペースを維持できなくなってしまった。これは同時にM-Vの需要がなくなるということでもあった。
宇宙科学分野の予算不足は、つまるところ情報収集衛星による予算の圧迫に加え、旧三機関の縦割りを引きずった宇宙航空研究開発機構(JAXA)内の縦割り予算配分に原因がある。M-Vを巡る問題は、技術の問題ではなく、組織の問題だ。組織の問題を、技術に押しつけるところにこの問題の本質がある。
そして、M-V低コスト化は、単なる次期ロケットのみの問題ではなく、糸川英夫以降作り上げてきたロケット打ち上げの自主文化をどう継承するかという問題でもある。
多くは妥協の成立を予想
多くの関係者は、この問題について「何らかの妥協があるのだろう」と見る。技術的な正当性は宇宙科学研究本部にあるが、縦割り組織の中で予算を握っているのは宇宙基幹システム本部だ。両者の間で何らかの妥協が成立し、技術的な正当性では一部を妥協して宇宙基幹システム本部の案との折衷案を採用し、予算を確保してロケット開発に入ることになるだろうというわけだ。
じわじわと宇宙基幹システム本部は、決着に向けた圧力を高めているようだ。現行のM-Vは、実際には地球低軌道に2.3tの打ち上げ能力があるにもかかわらず、公称値が1.85tに据え置かれているというのも、圧力の一つらしい。多分に、打ち上げ能力が落ちるH-IIAロケットのSRB-A流用案へのダメージを避けるための印象操作だろう。
宇宙科学研究本部にも、技術的正当性ばかりを主張してはいられない事情がある。宇宙科学研究本部の理系研究者達には「別にM-Vロケットでなくても、安全に自分たちの衛星を打ち上げられるロケットならば、なんでもいい」という考え方が存在する。さらに、予算の削減から、理系研究者達は自分たちに衛星が継続的に打ち上げられるかどうかの瀬戸際に立たされつつある。M-Vを守ると言う方向で組織が一枚岩に結束する状況ではない。
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