民生電機業界(2):資金力・技術力・販売力すべて投入する総力戦に突入
(杉 由紀=リーマン・ブラザーズ証券会社 株式調査部 ヴァイスプレジデント)
(前回記事はこちら)
2006年3月期決算に表れた大手有利の傾向は、今年から来年にかけてしばらく続くだろうと予想している。それは、薄型テレビ、DVD/HDレコーダー、デジタルビデオカメラ、デジタルオーディオなどのデジタル家電が、グローバル市場で普及期に入ってきたからだ。民生電機市場は、資金力・技術力・販売力のすべてを徹底投入することでしか利益をきちんと出せない「総力戦」のフェーズとなった。
この背景には民生電機業界特有の傾向もある。例えば、
- 市場がグローバルであり、シェアを取ることによるスケールメリット(規模の経済)が働きやすい
- メーカー数が多く競争が激しいため、1モデルあたりのライフサイクルが短い
- (1)と(2)の結果、長期的な均衡価格というものが存在しない。価格下落が常に続くため、間断なきコストダウンが必要
- 組み立てなど製造工程の直接費用(工場人件費など)が総コストに占める比率が低い。(3)に挙げた継続的なコスト削減を実行するには、部品や半導体を改善したり統合したりすることが不可欠。ゆえに、デバイス部門から完成品部門までを社内に抱える大手企業に有利になりやすい
カメラであれば眼に相当するCCD/CMOSイメージャー、DVDであれば画像処理を行うエンコーダー・デコーダーLSIや光ピックアップといったキーデバイスを自社開発することで、性能向上とコストダウンが図れる。また大量に使うLSIや部品の機能を統合することで部品点数を削減できる。テレビであれば、同じ液晶パネル・プラズマパネルを使っていても、より良い画質を表示するためのアナログ技術を蓄積する…といったことが必要になるわけだ。
また、デジタル家電は開発コストや設備投資負担が大きいため、ある程度のスケールメリットが得られるだけの販売力やブランド力が欠かせない。これらのことがすべてそろってやっと、毎年20〜30%の価格下落が進む市場においてイニシャティブが取れるのである。生産拠点を中国に移しても、一時的なコスト削減にしかならない。結局は価格下落の主導権を維持できず、後追いするしかなくなる。
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