不動産業界:ビル賃料の上昇と低金利を背景に業績拡大
(齋藤 健=みずほ証券エクイティ調査部 シニアアナリスト)
みずほ証券では、総合不動産大手各社の業績拡大が続くと考えている。
総合不動産大手の収益環境は良好。特に、三井不動産や三菱地所、東京建物、東急不動産、住友不動産が有望と考えている。三井不動産は「不動産サービス・プロバイダー」(資産管理など手数料収入を軸とした事業)へとビジネスモデルを大きく変化させた。三菱地所は、丸の内地区の再開発で収益拡大を図る。東京建物は、不動産証券化手法(不動産から生じる運用益を前提として、資金を調達する手法)を活用し、貸借対照表を膨張させることなく業容拡大を図っている。
総合不動産大手の業績拡大が予想される理由は以下の通り。
(1)東京都心を中心に不動産オフィス賃貸市場は活況。東京都心5区は、ほぼ満室稼働状態に近い。それゆえ、ビル賃料も上昇傾向にある。とりわけ港区、新宿区、渋谷区のそれは上昇傾向が鮮明である。また、最近は千代田区の賃料も上昇トレンドに入った。
(2)収益不動産(一定の賃料収入のある不動産物件)に対する購入ニーズが高まり、その価格の上昇につながっている公算が大きい。 (3)マンション市場は構造計算書偽装問題で、市場全体がやや停滞する可能性がある。しかし、消費者が「質への逃避」を起こすことを考慮すると、信頼性ある総合不動産大手に対するマイナスの影響は限定的と考えられる。「質への逃避」とは、多少価格は高くとも信頼の置けるデベロッパーが開発したマンションの購入に動く可能性があることを指す。
ただ、懸念材料がないわけではない。それは2007年の首都圏における超高層マンションの大量完成と、2008年の国債大量償還による長期金利上昇に対する懸念である。総合不動産大手の業績は、これらの問題を乗り越えて堅調に推移すると見込んでいる。しかし、株価について見れば、「不透明感」が台頭する時期は、市場全体の動きに併せて当業界の株価も足踏みせざるを得ないと思われる。特に金利上昇懸念が大きく台頭する場合は、財務体質が相対的に劣位にある企業の株価に注意が必要であろう。
都心のオフィス賃料が上昇
東京都心5区の事務所ビル空室率は2006年5月時点で3.2%と、ほぼ満室に近い状況。需給逼迫(ひっぱく)により、ビルのテナント募集賃料(テナント募集時の賃料、実際の賃料とは別)の上昇傾向が鮮明になっている。東京都心部にビル・ポートフォリオの多くを有する総合不動産大手は、その恩恵を受けよう。
とりわけ港区、新宿区、渋谷区にビル・ポートフォリオの多くを有する東急不動産、住友不動産は賃料上昇の恩恵を大きく受けると予想される。東京都心5区のビルテナント募集賃料を区別にみると、中央区が停滞気味なのに対して、千代田区、港区、新宿区、渋谷区のビルテナント募集賃料は上昇傾向がよりはっきりしている。
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