携帯電話業界(1)〜携帯電話ビジネスの収益力が高い訳
(小屋 知幸=日本総合研究所 主席研究員)
「アナリストに聞く2006」では、各産業をウォッチする専門アナリストに、さまざまな産業の最新の動向を語ってもらう。主なトピックは「主要な競争テーマ」、「注目の技術」、「注目の1社」だ。
自分が勤める企業が属する産業以外の産業を知ることで、視野が広がるのではないだろうか。新しいビジネスチャンスにつながるかもしれない。
第1回は、携帯電話産業の今を取り上げる。(nikkeibp.jp編集)
世界一リッチな携帯電話と世界一安価なブロードバンド
携帯電話の契約台数が、ついに9000万台を突破した。子供や一部の高齢者を除けば、ほぼ1人1台の普及レベルに達したと考えてよいだろう。携帯電話ビジネスは、市場規模約9兆円という巨大産業に成長した。業界各社の業績もまずます堅調である。ひところに比べて成長が鈍化したものの、NTTドコモもKDDIもピーク時の収益性を維持している。
これに対して、固定通信会社の経営は極めて厳しい状況が続いている。NTT東日本とNTT西日本はなんとか黒字転換したものの、依然として売り上げが減り続けている。同じ通信業界でありながら、携帯電話と固定通信の経営環境には著しい違いがある。それはなぜか…。携帯電話のサービスは付加価値が高く、固定通信は付加価値が低い。この点が両者の決定的に異なる部分だ。
ここに二つのデータを提示しよう。一つはOECD(経済協力開発機構)が公表している携帯電話のARPU(アープ:1契約当たりの収入)の国際比較データだ。これを見ると、日本の携帯電話ユーザーが支払っている料金が圧倒的に高いことが分かる。もう一つは、総務省が情報通信白書で示した100kbps当たりのブロードバンド料金の国際比較データだ。これを見ると、日本のブロードバンド(固定通信)の料金が(計算の仕方にもよるが)圧倒的に低いことが分かる。つまり日本の通信業界には、世界一リッチな携帯電話と世界一安価なブロードバンド(固定通信)が並立しているのだ。


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