かつての文学青年たちが目をさます
さて、長々と天野さんの小説家デビューの物語を紹介したが、もちろん、それがこのコラムのメインテーマではない。問題は今後も、天野さんのような人が出てくるかどうかということだ。私は大いにありだと思っている。
理由の1つは、団塊の世代は青春時代に、文学や文芸評論に数多く接している世代だということ。学生時代を思い起こせば、小説家志望の仲間はたくさんいた。文学部に在籍しているからではなくて、農学部志望だろうが、医学部志望だろうが、そういう人に限って、文学を愛し、たくさんの小説や評論を読んでいた。
そして、むしろ男性に文学志向の学生が大勢いた。中でも、ドストエフスキー、トルストイ、プーシキン、ソルジェニーツィンなどのロシア文学に傾倒する人が多かった。日本の作家でいえば、大江健三郎、辻邦生、小川邦夫、遠藤周作などの小説、高橋和巳、吉本隆明、埴谷雄高などの難解なものもよく読まれた。
今、あの文学青年たちは何をしているのだろうか。学生運動が収束し、その後、「会社人間」や「働き蜂」と称される過程で、忙しくて、それどころではないという言い訳のもと、その思いは放り出されたのだろう。
しかし、これからはどうだろうか。今、団塊世代には若き日の趣味や活動が、青春プレイバックとして蘇っている。「そういえば、小説を書こう、文学で生きていきたいと思った日々もあった」と思い起こす人も少なくないのではないか。
残念ながら、それで生きていくことはできなかったが、しかし、今なら、その思いに浸ることも可能だ。読む時間も、書く時間も、その気になればたっぷり取れる。再雇用が思ったほどハッピーでなかったことが分かり始めた団塊世代は、ふと自分の人生で遣り残したことに目を向けるだろう。その1つが文章を書くことであってもおかしくはない。
一時のあやしげな自費出版ブームではなく、書くことを心から楽しむ人たちが思いを遂げ、発表できる場をつくることこそ、次の自費出版ブームにつながるのではないだろうか。
●アリア
事業内容
・シニア世代の暮らしと行動研究
・シニア世代への情報提供
・シニアコミュニティの企画・運営など。
●NPO法人シニアわーくすRyoma21
「Ryoma21」は、主に50代を対象に、アクティブに生きるための仲間つくり、活躍の場作り、仕事作りを支援している会です。何かやりたいと思っている人が、それを実現するために仲間を募り、自己表現を行い、社会との接点を創り出す場です。モットーは、「いくつになっても、人は夢を語れる、学べる、成長できる、活躍できる」。
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