団塊世代と文学回帰〜定年後の作家デビューが始まる
以前、このコーナーで、「団塊世代と自費出版」というテーマを取り上げたことがある。今までの自費出版ブームを支えたのは団塊以前の世代であり、まだ現役意識の抜けきらない団塊世代は、人生総括的な色合いを持つ「自費出版」に関心はない、そうなるまでにはまだ時間が必要ではないかと書いた。ただ、いずれ、その時は確実にやってくるということも述べた。
最近になって、この予想は意外に早く現実化するかもしれないと思うようになった。それは、まさに団塊世代の女性が、定年を機に初めて書いた自費出版本がベストセラーになり、テレビドラマ化までされたという出来事があったからだ。この快挙に、「それなら、自分だって」と思った同年代も多いことだろう。
今回は、団塊世代自身の“本を出版する”“著作を持つ”ということの意味やこだわりを考えてみたい。結局のところ、読者の中から優れた書き手が発掘され、育成されることによって、また読者も増えていくのではないだろうか。ここにも、当事者参加型の世界が垣間見える。
定年を機に小説を書く
9月、テレビ朝日開局50周年ドラマスペシャルとして、2夜連続で『氷の華』が放送された。原作を書いたのは天野節子さん、61歳。初めて出した自費出版本『氷の華』が評判となり、ドラマ化のオファーが殺到、ついにメジャー出版され、ベストセラーとなったものだ。
ただし、天野さんは決してシンデレラではない。書き始めてから、メジャーデビューするまでには6年以上かかっている。小説家デビューのいきさつは、幻冬舎の自費出版部門である幻冬舎ルネッサンスの紹介サイトに詳しいが、ここでは、同世代が共感できそうな部分を取り上げつつ紹介してみたい。
天野さんは40年間、幼児教育の分野で働いてきた。独身で、肉親もすでにない。そして、唯一自分が精力を傾けてきた仕事も、まもなく定年で終わりを迎える。ひとりぼっちという思いを抱えながら、今後の人生で、この孤独感とどうつき合い、老いや死の恐怖とどう闘うのかということを考えるようになっていった。
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