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家族ブランディングは、会社(公)を捨てて家庭(私)に帰るという、いわゆる“脱サラ”的なものではない。家庭と会社の価値をフラットに捉え、そのバランス(ワーク・ライフ・バランス)を最適化していく試みなのだ。新しい家族作りにとっては、会社(仕事)とのバランスをどう取っていくのかが最も重要な課題である。この難題に立ち向かうためには、その前提としての「会社と家庭は等価である」というフラット化の思想が欠かせないのだ。

女性的なものの容認と家族回帰

また、社会のフラット化の延長線上には、女性的なものの社会的な価値の高まりともいえる現象が見られる。つまり「社会の女性化」だ。

これまでの男性優位、男性的価値観を旨とする社会構造は急速に崩れつつある。女性の社会進出はもちろん、たとえばファッションなどの女性的価値が男性にも広く浸透している。90年代に入ってからは、長髪、アクセサリー、化粧など男性ではタブーだったものも急速に一般化している。

「寡黙、威厳」などといった古き良き日本男児をイメージさせる性格の男性よりも、「話がおもしろく、やさしい」男性に人気が集まる傾向が顕著だ。お笑い芸人が人気女優と結婚といった話はもはや当たり前になっている。ちなみに、2005年にアサヒビールが調べた理想の父親1位はタレントの所ジョージだった。15年前は俳優の菅原文太だったことと比較すれば、男性的価値の変化が端的に表れていると言えるかもしれない。

社会の女性化は、家庭という存在の価値向上につながっている。家庭を会社の下に置くという旧来型のヒエラルキー意識がゆらぎ、家庭を顧みない生き方、家庭より会社を優先する発想が社会的に受け入れられなくなっているのは、女性的価値の相対的向上があるからなのだ。これは、前述した父親、母親の役割交換も後押しする。料理の上手な父親、保育園や小学校の送り迎えをする父親など、母親的な役割をこなす父親に対する社会的評価もきわめてポジティブな方向に変わりつつある。

以上見てきたように、「会社と家庭」、「公と私」、「男性と女性」、「父親と母親」、「親と子」、あらゆる面でそれまでの境界線、役割、規制やヒエラルキーといったものが消失しつつある。そして「家族、父親、母親はかくあるべき」という旧来型の固定概念も形骸化しているのである。そういった時代の中で、自分たちなりの家族作り(家族ブランディング)を志向する父親たちがめざすのが「フラット型」という新たなスタイルなのだ。

次回以降は、この新たな家族のカタチとも言えるフラット型家族の特徴について、詳しく見ていきたい。

※文中のリンクは編集部が作成したものです。

あいはら ひろゆき

1961年仙台市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大手広告代理店のマーケティングプランナーを経て2000年バンダイ入社。バンダイキャラクター研究所所長として数々の調査研究に従事。2002年に香山リカ氏との共著『87%の日本人がキャラクターを好きな理由』を発刊し、話題に。その後も現代の家族などをテーマにした調査研究を行っている。また、絵本作家としても著名で代表作『くまのがっこう』シリーズは70万部を超えるヒットシリーズとなっている。講演、他著作も多数。自らも小学1年生の娘を持つ父親として日夜「家族ブランディング」に励んでいる。

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