M&Aの事例から学ぶ現代投資ファンド用語(3)〜ファンドVS会社。勝敗の成否を分けたのは何だったのか?
(安田 育生=ピナクル会長&CEO)
(前回記事はこちら)
スティールの正論(?)はなぜ支持されなかったのか
前回までに、サッポロやブルドックソースなどの事例を取り上げた。スティール・パートナーズなどのファンド側は「全株主の利益を守るべき」として買収防衛策に反対したり、増配要求を行った。しかし現実は、株主総会でほとんどすべての提案が否決された。一見したところファンド側の主張は正論に聞こえるが、なぜ受け入れられなかったのだろう。理由はいくつもあるだろうが、「株主にも様々なインセンティブの株主がいる」ということではないだろうか。長期的視点に立つ株主と短期的リターンを重視する株主。会社のファン的株主と「通りすがり的」リターンのみ重視する株主。会社と運命共同体のようになっている株主も存在する。
「通りすがり」的株主とは。割安感のある企業の株式に着目し、短期間のうちに売買して売却益を得て去っていく株主のこと。一部のアクティビスト・ファンド(第1回を参照)やヘッジファンド、デイトレーダーなどが典型である。
しかし、先に挙げたような「企業ファン」的株主や、「運命共同体」的株主も一方で存在する。長年にわたって1つの企業の株式を保有し続ける彼らは、「戦略的に株を買い増し、株価を高騰させる」などのアクティビスト・ファンドの戦術に、簡単には同調しない。もっと長期的な利益に重きを置いているのである。
増配要求がそのいい例である。増配のような、現在の株主の収入が確実に増える提案までなぜ否決されてしまったのか? 恐らく長期保有株主は「今すぐの利益」よりも「数年後の株価増」に期待したのだろう。
物言う株主の代表、ウォーレン・リヒテンシュタイン氏が緊急来日
ブルドックの件では、もちろん、スティール・パートナーズも動いた。ブルドック経営陣が買収防衛策を発表した直後の2007年6月に、同ファンド創設者のウォーレン・リヒテンシュタイン氏が来日。東京で記者会見を開いた。今まで公の場に顔を出さないことで有名だったリヒテンシュタイン氏による緊急会見だけに、話題となった。
ウォーレン・リヒテンシュタイン
1966年生まれの米国人。世界で最も有名な投資家の1人であり、1993年に発足したスティール・パートナーズの共同創設者でもある。「もの言う投資家」の代表的存在でありながら、自身はメディアへの露出を好まず、表に出ることはなかった。しかし、2007年6月、来日して記者会見に登場。これが世界初の会見となった。
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