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一定の無駄こそが、本物の旨味をつくる〜ヨネビシ醤油 専務 黒羽 一望氏(3)

(荒川 龍=ルポライター)

 本物の味を求めた黒羽は、「一定の無駄こそが、本物の旨味をつくる」ことに行き着く。それは、絞(しぼ)り滓(かす)をも製品化しようとする、業界の効率至上主義とは対極にある考えだ。

半世紀を超える対話

小麦を炒る作業の翌日は、「盛り込み」作業を行う。蒸した脱脂加工大豆1.5tと、炒り小麦と麹麦を混ぜた加工小麦の合計1.5tを混ぜ込む。いわゆる「麹」づくり。1時間半かけてタンク内で蒸した大豆は、ベタついて、他の材料と混ざりにくい。そのためタンクを小刻みに回転させ、大豆を撹拌(かくはん)しなければいけない。

その後、ベルトコンベアーを使って材料を混ぜ合わせ、コンプレッサーでパイプを通して、工場2階の盛り込み場へ送る。この際、きな粉に似た匂いが周囲に立ち込める。混ぜ合わした黄土色の粉末を、高さ20㎝程度にならし、四角い場所に敷きつめる。盛り込み場で1日置いた後、この麹を発酵タンクに入れ、食塩水と混ぜ合わす。そこで1カ月間置くと、諸味(もろみ)になる。出来上がった諸味は、仕込蔵に移し、熟成発酵する。

黒羽が、1年半に及ぶ二度仕込み醸造を導入したのは1961年。その翌年、彼は満を持して塩分16%の低塩醤油を発売した。だが、売れなかった。黒羽によると、「独特の深い香りと旨味(うまみ)があり、他製品より塩辛くない味だった」にもかかわらずだ。

その原因はいくつかある。まず、醸造期間が6カ月前後の大手メ―カ―より高い価格を設定し、その高品質をアピールする作戦が裏目に出た。しかも、醤油の色が他社製品より濃厚で、当時の消費者には、身体に悪いイメージを与えた。

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