黒羽が考案した二度仕込み醸造は、その「麹」を再度つくり、タンクに貯めた段階の生醤油と混ぜて、再び諸味をつくる。その際、「櫂」の作業で加えた食塩水は加えず、さらに6カ月間熟成発酵させる。つまり、諸味の量は2倍になるが、食塩の使用量は半分のままだから、それだけ低塩の醤油ができる。
二度仕込みを行い、1975年に発売したのが「田舎醤油」。塩分は16%で、従来製品より2%低い。その5年後に発売した「米菱醤油」は、さらに塩分を下げ、12%を実現した。田舎醤油より4%減塩できたのは、甘酒に使う米麹を加えて熟成発酵させたからだ。その上、カビ防止を人工添加物に頼らず、天然みりんを加えて代替させている。

左側の濃い色が田舎醤油、右側の薄いのが米菱醤油
田舎醤油は、口に含むと濃くて甘い味がグワッと広がる。かなり骨太な味。カツオなど生臭い魚の刺身に向くという。押しの強い蕎麦つゆ好きの間でも、人気が高いらしい。
一方の米菱醤油は、鼻を近づけると、上品な香りが匂いたつ。口に入れるとまず大豆の旨味を感じた後、醤油の濃くが舌全体に広がる。同じ発酵食品のキムチも、美味しいものを口に入れると、まず旨味を感じた後に辛味が広がるが、あれに似ている。米菱醤油を一度口にしたら、筆者の自宅にある醤油が塩辛くて、まるで使えなくなってしまった。こちらは鯛などの白身魚の刺身や煮物など、田舎醤油より用途が広い。
実は、これらの製品化には多くの紆余曲折があった。(文中敬称略)
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