私が会社設立を志した理由
(諏訪 弘=フリーライター)
予期せぬ多額の印税が入って浮かれていた中年ライターを悲劇が襲った。高額な国民健康保険料と住民税の請求を受けたのである。その額は両者を合わせてざっと100万円! 愕然としたライターは、自衛と、お上に対する“復讐”のため会社設立を決意し、節税に励まんとする。果たして彼の思惑通りに事態は進展するのだろうか? 無名ライターによる法人設立顛末記。
遅れて来た所得倍増計画
私はフリーのライター兼編集者、ときどきカメラマンである。大学を卒業して15年近く、時に組織に属したことはあったものの、基本的にはフリーランサーとして過ごしてきた。キャリアはそこそこ長いほうだと思うが、これといった専門分野はない。だから単独名義の著作もない。当然、名前も売れていない。
改めて書くほどのことでもないが、「無名のフリーランサー」は、そのまま「貧乏」を意味する。つまり私は、この15年というもの、ずっと無名で貧乏であったわけだ。出版業界ヒエラルキーの最下層あたりで、あたかもダボハゼのごとく貪欲に仕事をむさぼって今日まで生き永らえてきたのである。
そんな私に転機が訪れたのは一昨年(2005年)のことだった。この年の夏、私がゴーストライターを務めたビジネス書が出版となった。幸いなことにこの本はよく売れて、順調に版を重ねた。さらに幸いなことに印税契約を結んでいたため、翌2006年の私の収入は倍増した(本が出版・増刷されてから印税が支払われるまでには、ふつう数カ月のインターバルがある)。
もっとも、「倍増した」といっても、たいした金額ではない(これは念のために強調しておきたい)。大雑把な額で言えば、それまで年収250万円だったものが500万円になったという程度の話にすぎない。ちなみに国税庁のWebサイトによると、私と同世代の男性ビジネスパーソンの平均年収は558万円である。私の収入レベルは、これに比べて数十万円は低い。
それでも倍増は倍増なのである。250万円で1年間の身すぎ世すぎをしていた者にとって、500万円の年収とは「ぜいたくさえしなければ一年間遊んで暮らせる」と同義である。私はパソコンを6年ぶりに買い替え、かねてより念願であった光回線を引き込み、取材用デジタルカメラの交換レンズを購入した。仕事関係の投資ばかりしているのが切ないが、それでも私は満ち足りた気分で2006年を過ごした。
そんな私を、悲劇が襲った。翌2007年の春のことである。
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