マラソン 野口みずき(後編)〜強さの秘密は純粋な心と周りの声を聞きそれを実践する力
(取材・文=荒川 龍 写真=吉田 竜司)
8月開幕の北京五輪に向けた日本代表応援企画「北京五輪への道」。第四弾は、女子マラソン五輪代表の野口みずき。
「足はすべてを映す鏡」──アスリートからの特別注文(別注)シューズ作りの職人、三村仁司(アシックス)の言葉だ。それを手がかりに、前回は野口のアスリート像に迫った。今回は、三村の「感性のシューズ作り」を通して、彼女の人物像を紹介する。それは同時に、人や物事の本質を見抜く三村の眼力に触れることにもなった。
野口選手の練習用シューズ。アテネ五輪を走ったのと同じモデルだ(拡大)
片足118gの思い出
── 23.5㎝の靴の片方を手のひらに載せると、風船みたいに、そのまま空中に浮かんでしまいそうな気がした。わずか118gとはいえ、もちろん浮かぶはずはない。しかし、同行したカメラマンも筆者と同じ感想だったから、あながち的外れなものでもないはずだ。前回のアテネ五輪のマラソンで、野口が履いた練習用シューズ。本番を走ったのと同じモデルだ。彼女のサイン入りのそれは三村が保管している。アテネの同じコースで行われた、97年の世界選手権を制した鈴木博美のシューズをモデルに、三村が開発した。滑りやすい路面を考慮し、靴底のスポンジ素材にもみ殻を混入している。三村が五輪用シューズを作るのは北京で8回目。毎回、自ら現地に出かけて全コースを下見。気候や路面状態を観察して、本格的なシューズ作りに入る。
三村 アテネのコースは、中盤の16kmから17.4kmまでグッと下る。次に18kmから32kmまでが高低差80mぐらいの上りで、今度はゴールまで約10kmかけて下る。起伏の多いサバイバルコースでした。16kmからの急激な下りが第一関門。野口は足首が柔らかいから、急な下りだとさらにストライドが広くなって、足を傷めやすい。だから、その区間では先頭に立たず、2、3番手につけと僕は助言したんです。前に走者がいると、歩幅は自然と短くなりますから。勝負どころは一番しんどい25kmから28km。お前だけでなく、相手もしんどい。そこしか勝負できんぞと言いました。
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