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クレイジーな練習量

── 野口の強さの理由として挙げられるのが、その豊富な練習量。アテネ五輪前の2度の合宿で、35日間の走行距離は1350kmと1370km。いずれも1800m級の高地でだ。合宿先で居合わせた男子10000mの世界記録保持者、エチオピアのベケレ選手が、その練習量を知って「クレイジー」と驚いたという。

三村 もしかしたら、野口の練習量は、男子マラソンの代表選手より多いかもしれない。ライバルのヌデレバ(ケニア)やラドクリフでも、そこまで走っていないでしょう。一つの大会に照準を合わせて、メリハリの利いた練習内容と、集中的な走り込みができる点では高橋(尚子)が一番。でも、1年通しての練習量は、野口が一番多いでしょう。あの子は、毎日の練習を大事なものとして取り組めるんですよ。

── その豊富な練習量を支えるのが、彼女のずばぬけた心肺機能。人間の最大心拍数は、「200から年齢を引いた数値」で算出される。その数値を超えたまま無酸素運動を続けると、筋肉が破壊されるとも言われる。ちなみに、安静時の心拍数は男性で60から70。女性で65から75程度。野口は、普段のインターバル・トレーニングでも心拍数が200を超える。藤田信之監督が、野口にマラソン転向を勧めたのも「このままトラックを走らしてたら、エンジンが焼き切れてしまう」という理由。以前は、10000mとハーフマラソンの選手だった。より長い距離になれば、ペースも遅くなり、心拍数も上がらないためだ。

三村 まあ、わかりやすく言うと、1500ccの車体に、2000ccのエンジンを載っけてる自動車みたいな感じ。だから1800m程度の高地に行っても、すぐに呼吸が順応して走れる。排気量が多い車と一緒だから、平地のマラソンでも有利でしょう。息が切れないんだから。そんな選手は、今までいなかったでしょう? 6回のマラソンで5勝という彼女の強さは、その豊富な練習量と、高い心肺機能。それとケガをしないシューズ。その3つが凄い。

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