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マラソン 野口みずき(前編)〜足はすべてを映す鏡

(取材・文=荒川 龍 写真=吉田 竜司)

 8月開幕の北京五輪に向けた日本代表応援企画「北京五輪への道」。第四弾は、女子マラソン五輪代表の野口みずき。起伏の多いコース、しかも酷暑の中で行われた前回のアテネ五輪女子マラソン。優勝候補のラドクリフ選手(英国)でさえ、嘔吐(おうと)して途中棄権するサバイバルレースを、身長150㎝体重40kgの野口みずき選手が制した。ゴール直後、彼女がそのシューズに感謝のキスをした場面は、当時何度も放送された。彼女が「魔法の靴」と絶大な信頼を誇るその作り手が、アシックスの三村仁司(60歳)。アスリートたちの特別注文(別注)に応じる、シューズ作り34年目の大ベテランだ。三村にとっても、野口の優勝はシドニー五輪の高橋尚子に続き、二大会連続の金メダルシューズだった。女子マラソン史上初の五輪連覇がかかる今大会を前に、その三村を訪ねた。彼の「感性のシューズ作り」を通して、野口の強さの秘密に迫る。

足はたえず変化する

── 神戸市西区にある、アシックスのスポーツ工学研究所。テレビアニメにでも登場しそうな、打ちっ放しコンクリートの要塞めいた建物だ。その中に多くのアスリートが訪れる三村の部屋がある。広さ16畳ほどの室内には、三村の机の左側に縦1.2m横2m超の大きな窓があり、その向こうで多くの人たちが、特別注文(別注)シューズ作りに励んでいる。その窓の下には寝台がひとつあり、三村がアスリートへのマッサージを施すこともあるという。

三村 足の大きさは、普通の人でも朝と昼で変化します。個人差はありますが、4ミリ前後は違う。朝起きたときが一番小さくて、午後2時から5時頃が最も大きい。歩いて活動するから、大きくなるんです。マラソンの場合、2時間半弱のレースを走り終えた足は5、6ミリも膨らんでしまう。あるいは、試合前のハードな練習で身体を絞れば、足も細く小さくなる選手がいる。足は本当に微妙なもので、サイズも形状も、わずかな時間や練習によるストレスで変化する。だから常にバランスを見て、シューズも微調整しなければならないし、放っておけばケガの原因にもなりかねません。

野口みずき(のぐち・みずき)
女子マラソン。シスメックス所属。1978年生まれ。三重県出身。宇治山田高校卒業後、ワコール入社。02年の名古屋国際、03年の大阪国際で優勝。04年のアテネ五輪金メダル。05年のベルリンマラソンでは、2時間19分12秒の日本新記録で優勝。07年11月の東京国際女子マラソンを大会新記録で勝利、北京五輪代表となる。写真は、アテネ五輪の女子マラソンで金メダルを獲得し、日の丸を掲げて声援に応える野口選手

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