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比類ない江戸時代の木版画 名もない職人の技術にほれ込む〜木版画職人 デービッド・ブルさん(1)

2008年9月9日

(伝農 浩子=フリーライター)

 日本の木版画は、文字や線画だけだった版画に、手彩色などの時代を経て、江戸時代中期に浮世絵師、鈴木春信(1725〜1770)の作品から、多色摺り版画(錦絵)の技法が完成したとされる。このころ、それぞれの色をずれることなく摺ることができる「見当」が完成されたため、際限なく色が使えるようになったのだ。そんな豊富な色使いの木版画に魅了されたカナダ人のデービッド・ブルさん。鈴木春信と同時代の絵師で、葛飾北斎の師匠でもあった勝川春草(1726〜1793)による『錦百人一首あづま織』100点を復刻させたことで知られる。

日本人は版画を見ているようで見ていない

デービッド・ブルさん(David Bull)
(ホームページはこちら

「日本の伝統的木版画を見たことがありますか?」

もちろん、浮世絵版画展など、展覧会には何度か足を運んだことはある。そう答えると、イギリス生まれカナダ育ちの木版画職人、デービッド・ブルさんは、顔をしかめた。

「それでは意味がないんです」

仙人のような風貌で、時に厳しい目。しかし表情豊かに笑いながら説明を続ける。

もともと浮世絵版画などは手に取って眺めたもの。本当の良さが分かるには、版画を机に置いて、窓から入って来る斜めの光で見るべき。もっと言えば障子越しが良いという。

自宅兼アトリエの裏には小川が流れる、自然豊かなところだ。

「そうして初めて、和紙の質感、立体感のある摺り跡、それによる陰翳、絵の具の色合いを感じることができるのです。筆の跡まで再現する微妙なラインや色の乗りまで分かる。彫師(ほりし)の力量、摺師(すりし)の力量が分かるのです。たった1枚の版画ですが、かかわった人たち20人くらいの力が集まってできた作品なんです」

壁にかけてガラス越しに見たのでは、版画なのか、印刷物なのか、カラーコピーなのかも見分けられないこともある。本当の版画の良さが分からないのだという。

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