「和醸良酒」がモットーの酒造り リーダーの杜氏にあこがれた〜杜氏 フィリップ・ハーパーさん(1)
(伝農 浩子=フリーライター)
海外での日本食ブームと共に注目を集めているSAKE=日本酒。日本酒は日本独特の杜氏制度のもとで造られる。蔵元(くらもと/酒造会社のオーナー家またはその会社)の社長と相談して酒の味を決め、蔵人(くらびと/酒造りのスタッフ)を束ね、酒造りの一切を責任持って取り仕切るのが、杜氏(とうじ)だ。酒の味も品質も、杜氏一人の腕にかかっていると言っていい。杜氏制度自体も過度期にある時代の流れの中、京都府丹後半島の西側の付け根、久美浜に近い自然豊かな場所にある木下酒蔵で、昨年の冬から杜氏を務めているイギリス人のフィリップ・ハーパーさん。日本初の、そして現在でも唯一の欧米人杜氏だ。
おいしい酒を生み出す秘訣は蔵人の和

杜氏のフィリップ・ハーパーさん(Philip Harper)
日本酒造りは、雑菌が出にくく低温での発酵管理がし易いため良い酒が出来る冬の間に造る「寒造り」(厳密には最も寒い数カ月間をいうが、一般的に冬場の酒造りのこともいう)が主流。夏はシーズンオフだ。イギリス人のフィリップ・ハーパーさんが杜氏を務める木下酒造の酒蔵に入れてもらうと、フルーティで爽やかな酒の香りが漂っていた。たくさんの酒が、タンクの中や瓶の中で、熟成されながら出荷の時を待っている。
酒造りでいちばん大事にしていることはなんですか。そう問いかけると、迷わず返って来た答えが、
「蔵人の和です」
ハーパーさんは、酒造りの場ではそれが常識、しかもとても重要なのだと言う。
「私たちが相手にしているのは酵母などの微生物。その活動を邪魔しないようにしなければいけません。そして、そのための条件は何かと言うと、人間のスムーズな動きなんです。酒造りにはリズムがあるんですね。そのリズムを壊さないために、携わる人間が皆、仲良く同じ方向を向いて、やるべきことをやる。人間関係がぎくしゃくすると、思うようにいかなかったりして、良い酒はできないんです。どの杜氏さんも言っていた言葉が『和醸良酒』。これは美徳とか哲学的に聞こえるかもしれませんが、かっこいいことを言っているわけではなくて、絶対条件なんです。それ以外には何もない」
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