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日本酒造りのあるべき風景 木桶仕込みを復活させる〜唎酒師/桝一市村酒造場取締役 セーラ・マリ・カミングスさん(1)

2008年7月1日

(伝農 浩子=フリーライター)

 冬の声が聞こえるとまもなく、酒蔵の軒先には次々と鮮やかな緑の杉玉(すぎだま)が下がる。これは酒林(さかばやし)とも呼ばれ、今期最初の新酒ができたことを告げるものだ。杉玉が茶色に変わっていくと共に酒は熟成されていく。全国には約1700の酒蔵があり、約1万種もの酒が造られているといわれる。その中で昔ながらに木桶を使って仕込みをしている蔵は数少ない。しかし、これは細い糸でわずかにつながっていた木桶仕込みの伝統が、完全に切れてしまう寸前につながれたもの。「伝統を継ぐ」どころか、一度は途絶えた伝統を復活させたのが、枡一市村酒造場の取締役セーラ・マリ・カミングスさんだ。

「日本酒って木桶で仕込んでいるんじゃないの?」

セーラ・マリ・カミングスさん
(Sarah Marie Cummings)

初めは素朴な疑問だった。長野県の小布施で250年以上続く日本酒の蔵元(酒造メーカー)、桝一市村酒造場(ますいちいちむらしゅぞうじょう。以下、桝一)で取締役を務める、セーラ・マリ・カミングスさんは言う。

「日本酒って、木桶で造っているものだとばかり思っていたんですよ。だって、アメリカで見た日本酒のパンフレットは、桶を描いた浮世絵がシンボルとして描かれていました。外国人はみんなそう思っていますよ、今でも。でも、酒蔵に入ったら違っていた」

初めて日本酒に触れたのは、関西大学に留学していたころ。何度も一気飲みをさせられて「2度と飲まない」と誓ったという。しかし、再び来日し、桝一の同族企業である和菓子メーカーの小布施堂に入った1994年に、日本文化を知ろうと参加した唎酒(ききざけ/試飲)大会で、種類の豊富さに驚く。その翌日には、長野県酒造組合が主催する信州酒愛好会「信州酒倶楽部」に誘われ、参加した。

「大学時代は、日本酒って1種類しかないと思っていた。でも、造り方もいろいろで、ワインのようにとても豊かで種類が多いことを知り、海外に紹介したいと思ったんです」

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